第11話 接触

「走り疲れておるやもしれん。

 毛布を。」

 レミの指示で、ネコ娘たちが自分たちの使っていた毛布を持参し、気絶している女性たちに毛布をかけていく。


 皮剥が終わったリサも戻ってくる。

 遺骸は焼却しているようで、微かに火柱が上がっている。


 さて、有り合わせの材料で作ったスープが朝食の食卓に上り、全員が食べようとした瞬間…。


「囲まれたようじゃのぅ…。」

 レミが肩を落とし、リサたちも忙しく耳を動かしている。


 風下の方から草を踏みしめる足音が聞こえる。

「全員、動かないでくださいね。」


 背中に当たる刃物の先と、落ち着き払った女性の声。

 食卓を取り囲むように姿を表すネコ獣人。

 そして…あきらかに目を輝かせる三人のネコ娘たち。


(本命が登場ですか…。)

 園田の脳裏につぶやく声がする。


「すまんが、食事が終わるまで、待ってはくれんかのう?」

 おどけるレミ

「私たちとの話が終われば、ゆっくり食べていいわよ、。」

 園田の背後に立つ女性が答える。


「ほう、ネコ風情の小娘が、妾を愚弄するか。」

 苛立ちを隠さないレミ。

 背後にはドラゴンの瞳が見える程のオーラが立ち昇る。

「レミ…。」

 園田はアイコンタクトを取り、落ち着くように促す。

 レミも不機嫌な顔にはなるが、オーラを収める。


「…わ、分かれば…い…いいのよ。」

 背後の女性が気圧されているのが手に取るように解る。

「それで、どういったお話ですか?」

 園田が切り出す。

「人種は黙っていろ!」

 刃物が気持ち押し出されている。

「お主が刃物を当てている人種こそが、このパーティーのあるじじゃぞ。」

「!!!」

 レミの言葉に、刃物の動きが止まる。

 娘たちが首を縦に振っている。


 …背中なら離れる刃物。


「このままで話を進めましょう。」

 背後の女性が話しかけ、園田は頷く。

「それで、話とは?」

 園田に促されて女性は喋りだす。


 園田たちの旅の目的はなにか?

 を連れてどこに行こうとしたのか?

 毛布に包まれているネコ獣人をどうするつもりなのか?

 犬とトカゲの獣人を従えているが、彼女たちは奴隷なのか?

 など、怒涛の質問攻め。


 質問が一段落したところで、園田が切り返す。

「…話しではないような気がするんですが。

 …時系列に順序立てて話していきましょう。」


 そういうと、リサとレミを招く。

「この二人はになっています。

 …いででででっ!」

 言葉のトゲに反応し、園田の耳をリサは右に、レミは左に引っ張り上げる。

 耳を引っ張られたまま話を続ける園田。


「いてて…で、ここに来た目的は、三人の娘さんを親元に返すためです。

 その子たちは、ウォーウルフに連れて行かれるところを、こちらにいるリサと助けたんです。」

「そして、この娘たちに加護を与えたのは、妾じゃ。」

 ほっぺに人差し指を当て、微笑むレミ。

 ちなみに、ネコ娘たちは園田たちの身の上話を聞いてポカーンとしている。


「ちなみに、今、毛布に包まれている者たちは、今しがた『ブィルドキャット』たちから助け出した者たちじゃよ。」

 レミの発言で言葉が出てこない女性、何か考えているようだ。

 取り囲んだネコ獣人たちも心配そうに園田の背中に立つ獣人の顔を見ている。


 その時、レミがおもむろに食器を片付け始める。

「ここで話していても始まるまい。

 人種が来る前に、お主たちのネグラへ案内せいっ!

 あるじよ、移動の準備だ。」

「わ、分かった案内する。」

 女性が背後から離れ、園田の隣に立つ。


「母娘…なのか?」

 三毛猫の獣人がそこには立っていた。

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