第3話 夕食はカップラーメンで

 さて、リサの知りうる情報を聞き、俺の知識を提供し話し合った結果、とりあえずハイ○ースを移動させる事になった。


 リサに手伝ってもらい、転げだした荷物をダンボールに押し込み、天井のキャリアに放り上げる。

 一段落ついた頃、辺りもだいぶん暗くなってきた。


 さて、明かりになるものを探しているとランタンが出てくる。

 無論、蛍光灯付きの懐中電灯も近くに置いてはあったのだが。


「この車の持ち主って、何考えてるんだ?」

 一人愚痴りながら、三脚も取り出し、ランタンに火を灯す。

 カセットコンロはそのままに、ヤカンへ水を追加し、カフェオレと共に見つけておいたカップ麺を三つ四つ持ってくる。


「光の魔術?

 炎の魔術?」

 見れば、リサがランタンを不思議そうにみている。

 椅子とカセットコンロをランタンの近くに移動し、リサを座らせる。


 お湯がわき、カップ麺の蓋を開けるとこれにも興味を示すリサ。

「カフェオレ?」

 お湯を注ぐ動作を見てリサが聞いてきたので、食事だと答えると、首を傾げていた。

 が、三分ほどで食欲をそそる匂いがし始めると、しっぽが左右に大きく揺れ始める。


 箸を渡し食べ方を教えたところで。

「いただきます。」

「イタダキマス。」

 見よう見真似で手を合わせ、カップ麺を食べ始めるリサ。


 ハフハフ言いながら食べ始めたのを見計らい、私も食べ始めた。

 結局、準備したカップ麺はきれいに売り切れてしまった。

「ごちそうさま。」

「ゴチソウサマ。」


 ゴミ袋にカップ麺のカラを入れ、新たにカフェオレをリサに渡す。

「ありがとう。」


 すっかり、御礼の言葉も覚え、言葉による意思疎通はだいぶん取れてきた。

 これで、星空でも眺めれば、気も紛れそうなものだが、相変わらず木々は鬱蒼と茂り、辺りは静まり返っていた。


 不思議なことに、寒くもないのに虫の声さえ聴こえてこない。


「あのぉ、ソノダ。」

 リサがモジモジしながら話しかけてくる。

「はい、どうしました?」

「今夜はどこで寝ればいい?」

(しまった!テントを出し忘れていた。)


 というより、テントが積んであったかが問題だった。

 後ろの荷室に格子状の棚が整備されており、色々積まれているようなのだが、この暗がりでは探すのにも相当骨が折れそうだ。


 幸いハイ○ースの助手席には荷物が乗っておらず、毛布は助手席の後ろに置いてある。


「とりあえず、今日はこいつの中で寝るとしましょう。」

「これ…です…か…。」


 俺が指差した先にあるハイ○ースをしげしげと見るリサ。

 カセットコンロの火を落とし、ハイ○ースの助手席ドアを開き、毛布を置く。


「ここで、休んでくれ。この毛布をかぶれば、寒くはないはずだ。」

 リサは怪訝けげんそうに頷き、助手席に座り毛布をかぶった。

 椅子を目一杯後ろに倒してやると、びっくりして毛布から顔を出すリサ。


「すいません、びっくりさせてしまいましたね。」

「いい、この寝床、フカフカで気持ちいい。」

 そう言って、再び毛布をかぶるリサ。


 とりあえず、椅子を片付け、天井へ。

 が、ゴミ袋を放り上げるのはさすがに気が引けたので、少し離れたところにゴミ袋を置いた。


 ランタンは、消さずにそのままにしておいた。

(まぁ、標的になってしまう危険性は有るが、真っ暗にして、変な動物が寄ってこられても困るからなぁ。)

 この日は、早めに運転席に座り毛布をかぶって眠りについた。

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