第2話 イヌ娘

 藪から出てきたリサという名のイヌ娘。

 立ち話もどうかと思い、パイプ椅子を二脚取り出し、それぞれに座る。


 お茶受けも必要だろうと、カセットコンロとヤカン、○○の水にカフェオレを一箱、紙コップの束を取り出す。


 一連の動作を不思議そうに眺めるリサ。

 コンロの火を付けた時には相当驚いていたが、紙コップからカフェオレの匂いが漂うと、彼女のしっぽが左右に揺れていた。


 お茶を楽しみ、二杯目のカフェオレを飲み始める頃、リサが話し始める。


「私はリサ。

 見捨てられた土地から逃げてきました。」

 お茶をすすっていると、リサは話を続ける。


「私、炭鉱労働者の慰み物として連れて行かれるところをすきを見て逃げた。

 で、この森に逃げ込んで…。

 三日目かしら、雷が落ちたのをみて、ここに来た。」


「雷が…落ちたんだね。」

 どうやら、私がここに来たときに雷が落ちたようだ。

「ええ。…ソノダは神様か?」

「神様…ではないです。」


 二杯目のカップを空にして、私のここまでの経緯をリサに話した。

 彼女は傾聴し、適宜質問をしてくれたおかげで、私自身の思考の整理もできた。


「つまり、ソノダは、ここではない別の世界から落ちてきた?」

「たぶん。」

「…難しいことわからないけど、分かった。」


 リサもカップの中身を空にする。

「リサさんに聞きたいことがいくつかあるんですが。」

「はい?」

「あなたは、逃げたと言いましたけど、追手は無かったのですか?」

「仲間の助けがあった。

 私は早々に振り切れたけど、他の子たちは、もう…。」


 涙を流し言葉が出なくなるリサ。

「すまなかった。」


 俺は頭を下げ、彼女が落ち着くのを待った。

 そして、水や食料の確保について色々聞いてみたのだが…。


「ごめんなさい、私もこの森に来て三日ぐらい。よくわからない。」

「そっかぁ~。」

 タバコを咥え、火を付けようとするとリサが後方へ飛び、身構える。


「ど、どうしました?」

「火の魔術、お前魔術士か?」

「火??」

 手元を見るとライターが…。


「ああ、これですか。」

 ライターに火を付けてみると、リサがビクッとして、更に距離を取る。


「これは、ライターという火を付ける道具です。魔術じゃありません。」

「ライタァ??」

 恐る恐る近づいてきたリサの手にライターを渡し、火の付け方を教える。


 リサの手で火が付くライター

「!!!」

 何度かライターの火を付けるリサ

「火の道具…。」


 しばらくライターを眺めていたリサが、ライターを私に返し椅子に座った。

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