第108話
そして三人目が、デーミウルゴス。
職業は魔術師とあり、レベルは92だった。
複雑な文様の入った赤い服を着た男性の姿で、杖のようなものを手にしている。
どうやら父はこのデーミウルゴス、アリオン、ピコとの四人で、いつもプレイしていたようだった。
チャットのログを辿っていくと、どうやらレベルの横に表示されている数字は「ゲーム内ランク」と呼ばれるもので、レベルとは別にゲームのプレーヤー全体の中で自分がどの位置にいるのかを順位で表しているもののようだった。
「ゲーム内ランク七位……」
デーミウルゴスのランキングを確認し、英理は茫然と息をついた。
百万人を超えるプレーヤーがいる中で、ゲーム内ランクが一桁の者は怪物ぞろいだ。
翼の帝国が開設された初期からプレイしているメンバーであり、ゲーム内でも別格の実力と知名度を誇る。
――江本弥生がデーミウルゴス?
ゲーム内での名前や性別や容姿は当然のことながら現実世界に合わせる必要はなく、むしろ好んで理想を投影したり、全く別のキャラクターを設定する者も多いと凜が言っていた。
だとすると、弥生がゲーム内でデーミウルゴスとしてヴェリナスである父と出会い、やがて現実でも面識を得るようになったと考えても不思議ではない。
英理は目を細めてチャットのログを追ったが、他愛のない会話や次の集合時間を決めているようなものだけで、決定的な手がかりは得られなかった。
翼の帝国の各チャットの履歴が残っているのは最大五日間で、それ以前のものは自動的に削除されていく。
メール機能であるパーソナルメッセージのほうは一カ月は保存が効くようだが、こちらも有力な証拠を掴むことはできなかった。
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