第58話

「今度はこんなのしようと思ってるんだ」


凜が自分の趣味の本を見せてくることは珍しく、英理は興味を覚えて誌面を覗き込む。


そこには赤や青や白といった鮮やかな色彩の、ぴっちりとした水着のような素材の服に全身を包んでいる少年少女の姿があった。


「これ全身タイツじゃん」


思わずツッコむと、憤慨ふんがいした様子で、


「プラグスーツ!」


と訂正された。


「素材が難しいんだよね。ぴちっとしてて柔軟性があって、でも甲冑も必要だから……」


「まさか作る気?」


「もちろん」


凜は胸を張った。


「できたら一番最初に英ちゃんに見せてあげるね」


「はあ……。まあ、頑張れよ」


英理は気の抜けた相づちを打った。


少年少女たちの耳あたりについているものを指さし、


「これ何?頭にアンテナつけてんの?」


「インターフェイス!」


凜は恐ろしい冒涜ぼうとくを見たような面持ちで言う。


「これで接続してるの」


――何とだよ。


思ったが、英理は口に出さないことにした。


これ以上突っ込んで、怒らせるのは得策ではない。


代わりに、恐る恐る忠告した。


「頼むから、それで外を出歩かないでくれよ。捕まるから」


「家の中だけだもん」


凜は小さな鼻を可愛らしく上向けて言った。

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