第45話
「あなたたち、あの子をお
恵美子は先ほどまでのヒステリックな様子とは打って変わって平坦な声色で言い、二人をじっと見据えた。
「一目で分かったわ。あの女は悪魔よ。
……いいえ、悪魔よりもっとたちが悪いわ」
英理は有理を見た。
有理は黙って、興味深げに恵美子を観察している。
「いるのよね、さも繊細ぶって男をたらし込む、蜘蛛みたいな女。私の若いときにもいたのよ。どれだけ時代が変わっても、これだけは変わらないわ」
――いるよね、顔だけで世の中渡っていくタイプ。
先日の冴島慶子の言葉を思い出し、英理は恵美子の姿に慶子が重なって見えた。
「そいつの本性を見破れるのは、同じ女だけ。でも本当のことを口にすると、彼女たちはさも被害者であるかのように泣き真似をする。男はこぞってそっちの味方をし、全力でかばい立てるっていう始末。
そして気づけばこっちは、悪者に仕立て上げられているのよ。この落とし穴にはまったら、男も女もなかなか抜け出せない」
まるで中空に書かれた台詞を読み上げるように、遠くを睨みすえて恵美子は語った。
確かに――英理は半分同情、半分同感していた――弥生は意図してかせずかは知らないが、周りの人間を悪者にしてしまうところがある。
たとえ正当な憤りや反発でも、弥生にその力のベクトルを向けると、面と向かって跳ね返されるわけではないが、なぜか罪悪感に形を変え、思わぬしっぺ返しを食らいそうな予感を連れてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます