第13話

その後、英理は数少ない社内の知り合いに片っ端から連絡して、何とか合コン参加の承諾を取りつけた。


「ありがと。助かったわ」


缶コーヒーを手渡され、「ごちそうさまです」と頭を下げる。


「そんなことより、早く行かないと間に合わないんじゃないですか。もう十九時前ですよ」


「ああ、大丈夫大丈夫。店までタクシーで10分だから」


と答え、慶子は小さく舌を出す。


「さっき時間がないって言ったのは、急かせば押し切れると思ったからそう言っただけ。本当は待ち合わせ十九時半だし、全然間に合うの」


「そうだったんですか」


ともかく何とかなったことに、英理は胸を撫で下ろしていた。


「しかし、本当むかつく。非常識にもほどがあるわ。澄ました顔で『お断りします』って、あんな言い方ある?断るにしても、もうちょっと言葉を選べっての」


飲んでいたミネラルウォーターをゴミ箱に勢いよく投げ込み、憤懣ふんまんやるかたない調子で慶子はなじった。


「可愛いからって、何やってもいいと思ってるんじゃない?いるよね、顔だけで世の中渡っていくタイプ」


同意も否定もできず、英理は曖昧に沈黙を守った。


確かに弥生はお世辞にも愛想がいいとは言えず、とっつきにくいことは間違いない。


だが、それを差し引いても可憐な容貌に惹かれ、ちやほやする男性が一定数いることも事実だった。

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