第4話
ようやく一件落着かとフロア内の空気も解けてきたところへ、
「ったく、本当に使えねえな。お前は」
英理は最初、それが自分のことを言っているのだと気づかなかった。
コンマ一秒遅れで、困惑と怒りに顔が燃える。
マイナス百度で沸騰する、回転式の火花。
その頃には、部長は背を向けて自席に戻るところだった。
「ゆとりはこれだから」
ぼそりと呟いた背中に、手にしたボールペンを思い切り突き立ててやりたいと思った。
「いや、俺じゃねえし」
震える足でフロアを突っ切り、非常階段に出て後ろ手で扉を閉め空を見上げる。
叫ぶことなどできない。どこで誰が聞いているか分からないから。
――俺じゃねえし。
惨めさが込み上げてくるのを懸命に宥めようと、強いてゆっくりとまばたきを繰り返す。
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