第8話 復学、卒業、そして・・・

私は再度、短大に復学してもう一度二年生をして卒業しようと決意しました。


子供の頃からずっと憧れてた「幼児教育学部」です。


資格は取れなくても、せめて卒業はしたい・・・。


私は強くそう思いました。

本来なら実習等で資格を取ることは可能ですが、私は中学三年の時の「手術」で体が一気に弱まってしまい、実習は医者から「体的に無理」と言う理由ですべてドクターストップが出てしまったのです。


中学三年の手術は生きるか死ぬかの大きな手術でした。

発見が早ければ「虫垂炎」でも特に問題がなかったかもしれません。

しかし、私は体の中がおかしくなっているということに気付かなかったのです。


後で知ったことですが「広汎性発達障害」の特徴として症状が自分で分かりにくいものとして「膀胱炎などの尿路感染症」「中耳炎」「虫垂炎」があると言うことです。


なので、私は体育の授業で目の前が真っ暗になっていって倒れて意識を失って、そこでようやっと病院に運ばれて「虫垂炎」だと分かったのです。


そして、膿も体に広がり始めていたのでとても時間を要する手術だったと聞いています。


その手術で一命は取り留めましたがその代わりに私は子供を身ごもっても産むことができない体になりました。


医者の話では、私が子供を身籠って母子ともに問題なく産まれる確率は三パーセントしかないと言われました。

たとえ、子供が無事に生まれても母体は良くて植物状態になる確率が高い・・・と言うことを医者が言っていたそうです。


私はそのことを再度二年生をしたときに親から聞かされました。


でも、なんとなくそのことを聞かされる前からその予想はありました。


「多分私は子供を産めない・・・」


何の根拠もありません。

でも、何となく無理だろうというのを悟っていたのです。


だからこそ、卒業だけでもして何らかの形で「子供の先生」になりたかったのです。


幸い、復学して私に嫌がらせをしていた人たちは卒業していたので内心ほっとしました。

そして、私の代の次の代からは女子短大から共学になったので男子学生も加わりました。

だからかどうかは分かりませんが、私に嫌がらせをする人はいなくなりました。


復学して先輩たちは相変わらず可愛がってくれました。

私から見たら先輩たちは皆「お兄ちゃん」みたいな人たちばかりでした。

すごく優しくて温かな先輩たちばかりでした。


そして、私は短大を卒業してしばらくしてから「学童保育所」で働き始めました。


子どもはとても懐いてくれてすごくかわいかったです。


でも、その頃はまだ体も万全ではなかったので仕事の過労で私は劇的に痩せて倒れてしまったのです。


原因は「ストレス」でした。


同僚の先生から私はあまりよく思われてなかったので、遠回しの攻撃を受けていたのです。

それにより、心が疲弊して体にまで影響が出て、私はとうとう倒れてしまいました。


通院していた病院に運ばれて、医者から「命の危機」と判断されて入院を余儀なくされました。


そして、ある程度回復して医者との診察の時に言われました。


「この障害を抱えながら、良くここまで頑張りましたね。


 でも、もうこれ以上頑張らなくていいのですよ。


 今まで頑張った自分を褒めてあげてください。


 そして、休ませてあげてください。


 あなたは今の今まで十分頑張りましたよ」


医者にそういわれた時、私は涙が溢れました。


私は自分が人じゃないから「人」になるためには人一倍努力するのが当たり前で、泣き言なんかを吐くわけにいかない。

誰よりももっともっと頑張らないと私は「人」になれない。


ずっとそう感じていたので私はずっと弱音を吐かずに頑張ってきました。

そして、これが自分にとっては当たり前だと思っていたのです。


頑張らなきゃ・・・。


もっと頑張らなきゃ・・・。


もっともっと頑張らなきゃ・・・。


ずっとその言葉を自分にかけ続けてきました。

でも、これが私自身を苦しめることになっていたのです。


私は自分で自分を余計に追い込んでいたのです・・・。


だから、医者からそう言われて私は初めて自分の努力が認められたと感じ、本当にそれが嬉しくて涙を流してしまったのです。


この時から私自身の障害をきちんと勉強することが始まりました。


もちろん、それは平坦な道ではありません。


想像以上に大変なものでした。


そして、その頃ユウヤは私の心の中にできた人格の処理に追われていました。


のちのち、この人格たちが表に出てきて私の日々は壮絶なものになっていくのです。

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