第19話 ホントノ、ノゾミ

 イオは頬が濡れていることに気が付き、目を開けた。


「ん……ん?」


 目を開いた瞬間、視界にユルギの顔が広がった。


「にゃ⁉」

「イオ! 良かった!」


 ユルギに頭を抱えられる。

 イオは膝枕をされていた。

 目が覚めるまでずっとその状態で待っていてくれたんだろうか。

 日はまだ天高くあり、JK狩りのタイムリミットはまだある。


 だが———、


「良かったって……別に放っておいてもらってもよかったのに……私は不死身のフェニックス。というかラビットの言ったように放置するのがベストな選択だにゃ」


「放っておけないよ。もうイオとは友達だもん」


「————ッ!」


 泣いていた。

 ユルギは本気で、泣いていた。

 本気で———イオを心配していた。


「頭なんか吹き飛ばされて本当に復活するか、心配だったんだからね!」

「…………あぁ」


 ふざけんな。


 ————嬉しい。

 ヤバい———超、嬉しい。


 こんな気持ちになったの、本当に何年ぶりだろうか。


「あぁぁ……ごめん、ユルギ。心配かけて」

「うん」

「だから、その弓を下ろせよ。ラビット。もう私はユルギを殺すつもりはない」


 ラビットは帰って来ていた。

 猪二頭を地面に置き、弓を構えてイオを睨みつけていた。


「…………」


 そして、あっさりと弓を下ろす。


「忘れてたよ。なんで私が日本に行きたかったのか。何で日本のアニメの生活に憧れていたのか」


 体を起こすフェニックス。


「どうして?」


 涙をぬぐいながら尋ねるユルギ。


「……また忘れた」

「えぇ……」


 嘘だ。

 本当は憶えている。 

 

 ————友達が欲しかったんだ。


 一緒に笑い合いたかったんだ。

 いつしか———自分には無理だと思ってしまった。

 こんな手が血に濡れた自分には———二度と友達と笑い合う資格なんてないと思っていた。

 だけど———、


「馬鹿だにぇ……」


 イオは抱きしめられて伝わるユルギの熱を感じながら、目を閉じた。

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