第4話 申———モンキー
フランス、マルセイユの廃工場にて。
「ヒィィ~~~~~! ヒィィィ~~~~~~~!」
中年の男が必死の形相で
ギギィ……、ギギィ……。
彼が
人体。
彼が分解しているのは人間の体だった。
腕を切り落とし、肘を
「ハァ~~~~~~~~‼ ハァ~~~~~~~~~‼」
「パパァ……」
その光景を涙を流しながら見ている少年がいた。
彼はがんじがらめに縄で縛られ、床に転がされている。
「も、もう嫌だァ! こんなことしたくないィィィィ!」
中年は絶叫し、ナイフを投げ捨てるが。
パチン。
少年の指が
「ィああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
「サムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼」
ぽとりと少年の中指が落ちる。既に床には五本も指が落ちていた。
「———ん、今なんだって? なんか言った?」
スレンダーな体つきをしていてモデルかと思うほどの美しい容貌だったが、その体を返り血で汚している。
「やめてくれェ~~~~~! やめてくれェ~~~~~~~~~~~~~‼」
中年の男は半狂乱になりながらも解体中の死体を拾い集め、細かくなったパーツをミキサーに入れ————作動させる。
機械音がなり、電動ミキサーの内部に血肉のジュースが生成されていく。
「ウッ……オェェェェェ!」
中年がたまらず吐き出し、
パチン。
「ぃやあああああああああああああああああああああああああああああ‼」
少年の指が再び切り落とされた。
「ナ‼‼、何デェ⁉ 何で⁉ 何でサムの指を切り落としたああああああぁぁぁ⁉ 息子の指をおおおぉぉぉぉぉぉぉ‼」
「吐くならトイレで吐きなさいよ。匂うでしょ。まだ作業は残ってんのに……これ以上切り落とされたくなかったら。ほら、急ぐ」
シャキシャキと
軽い言葉遣いだ。この状況に似つかわしくない。だからこそ、中年の男の精神はどんどん削れていき、
「フヒ……ハハ、アハハハハハハハハ!」
血肉のジュースをバケツに入れると、どんどん他のパーツをミキサーへかけて、再び血肉ジュースを製造していく。
人間が粉みじんになっている独特の匂いが発せられ、中年の男が吐いたゲロの匂いなど全く気にならないほど悪臭が工場内を満たしていた。
「サボらずにちゃんとやるんだよぉ~~~! 終わったらそのバケツ。ちゃんとトイレに流して掃除しといてね~~~~~! あ、これ使っていいから」
と、鋏をスレンダーな少女は投げて渡す。
「ありがとうございます! これで指が簡単に分解できますぅ~~~~!」
男の眼に———既に、正気はなかった。
「ハイハイ……あ?」
ピロピロピロピロピロピロッ……!
少女の携帯に電話がかかってくる。
「もしもし、こちら人材派遣サービス『モンキーデリバリー』ですが? どちらさま? 仕事のご依頼?」
『イイエ』
電話の向こうの相手は変声機を使っており、ひどく低い声で男か女かもわからなかった。
「ほーなの。じゃあ今忙しいんでかけなおしてもらえます?」
『ワカリマシタ……』
妙なかけ方をしているくせに、思ったよりも聞き分けがいいな。
少女は眉をひそめた。
「ちょい待ち———切る前に用件きかせてもらえます?」
あまりにも妙。本能的に警戒した。
『おめでとうございます。あなたは見事当選し、平穏のチケットを手に入れました。
————キラーバケーションへようこそ』
………………………。
………………。
………。
世界各国の十二人の殺し屋の少女。
彼女たちに贈られた招待状。
それは東の島国にある、誰にも知られていない無人島へのチケットが同封されていた。
鬼ヶ島。
近くの島の漁師がその存在を知っているだけで、怖がって近寄ろうともしないその島に、彼女たちは集められた。
鬼ヶ島は漁師たちがつけた名前だ。
その島は鬼の住処で、近寄ると鬼に殺されると言う言い伝えがあったからだ。
そこに少女たちは集められた。
ただただ———〝平穏に暮らせ〟という指令を受けて。
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