第3話 酉———フェニックス

 中東のある国では一つのビルが丸々爆破された。

 中から火だるまの人間が出てくる。


「あっつ‼ あっつ‼ あっつ‼」


「おい大丈夫か⁉」


 近くにいた男が慌ててその火だるまへ水をかけたおかげで、何とか水は鎮火し、


「いや~危ない危ない やっぱり爆弾は間近で見るに限る……にしても限度があるけどねぇ~アッハッハッハ‼」


 火だるまは女の子だった。

 赤い髪で、年も若い、幼さの残る顔立ち。


「おい……君……大丈夫か?」

「あ~ごめんね。わざわざ消してもらっちゃって! 世話かけたね! ところで———、」


 女の子は平然と立ち上がった。

 先ほどまで火だるまだったのに、体には少々の火傷のあとしかない。


「コレ、あなたのです?」


 少女が指さすのはすぐそばにある赤い高級車だ。

 ドアが開いていること、その間近にいた男が水をかけて助けたこと、男の身なりが高級スーツであること。そういった材料から判断したのだろう。


「あ、ああ、私のだが、それが?」

「ごめんね。あんたもターゲットだわ」


 少女は携帯のボタンを押した。



 ボンッッッ‼



 赤の高級車が爆発し、少女も男も吹き飛ばされる。

 男は爆発の衝撃で五体がバラバラに砕け散ったが、少女はコンクリートをゴロゴロと転がり、木にぶつかり勢いが止まるだけに被害が留まる。


「……~~~~~ッッッ、ァッアッハッハッハッハッハッハ‼ おもろ~~~~! 最高だわ~~~! 爆発ってわけもなく楽しくなるから最高だわ~~~~~~~~~~~‼」


 彼女の傍には先ほどの男性の生首が転がっていると言うのに、それをバシバシと叩きながら、ろくに傷も負っていない少女は笑い続ける。



 ピロンッ!



「アッハッハッハッハ! ん?」


 爆弾の作動キーの役目を果たしていた携帯にメールが受信される。


「なにこれ?」


『フェニックス様へ』


 普段使いをしている携帯だった。そっちに仕事用のコードネームあてのメールが来ていた。



 ————キラーバケーションへようこそ。



 メールの文面にはそう書かれていた。

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