第3話 召喚魔法陣
「着いたわよ」と美香さんは
細い階段を上がっていく。
細長い宿屋の様な建物だったので
聞いてみると「アパート」と言うらしい。
一つの扉を開けて中に入る。
私は驚愕な光景を目にする。
壁全体に広がる書物!書物!書物!
向うの世界と違い大小さまざまな
モノがある。
その一角にはなんと!これも書物!?
「むちゃくちゃ薄いな!」と声に出す私。
美香さんは私の為に取り出し
絵だらけ。兎に角、絵だ。文字は少ない。
「これおかしいですね。人物の目が
顔半分以上ありますよ。人間とは
違う生命体の絵ですか?」と
私は聞くと、美香さんは
「そんなものなのよ」と笑いながら言う。
それは後でゆっくり見せてあげると言う
事だったので、隣の部屋に移る。
そしてまた、驚愕な光景を目にする。
大量のホムンクルス!?約200体ほど。
大中小様々なモノが恰好良く並べられている。
フィギュアというものよ。と
教えてくれた。
ひときわ目に着くのが「ふじ みねこ」と
台座にかかれた女性のフィギュア。
聞くと「アルセーヌ3世」という盗賊の
アニメに出てくるそれはそれは
素晴らしい女性、女性の鏡のような
人物を基にしているらしい。
さぞお淑やかなのだろう。
美香さんは数体を説明する。
「シラヌイの騎士」と言うアニメに
出てくる人型のロボットというモノ。
住むところがなくなり、
宇宙と言う空間を漂う船を守る
ロボット「ユキモリ型」。
確かに格好いい。なにかこう、熱いものが
湧いてくるような造形だ。
特にこれは並んでいるフィギュアの中でも
大きく、約80センチほどもある。
「全ての関節が動くのよ!40万も
したのよ!でも満足。」と美香さんは
ご満悦だ。
美香さんは何かの箱のようなものを触り
なにか板のようなものをカチャカチャと
音を立てて触っている。
突然立てられている板が光りだし
ナニカを映し出した!
聞くと「パソコン」と言うものらしく
様々な情報を瞬時に閲覧できる
なんとも、神の書物のようなモノ。
「あなた操作できないので、見てて」
そう美香さんは変な物を顔の装着をする。
「あ、そうか」というとそれを外し
「2Dモードにするね」という。
わけわかんない言葉だらけだ。
ほうほう、これは地図ですな。
私はその写しだされた大陸の地図を見て
3度目の驚愕。
「エアスト大陸ではないか!」と。
ブラウ、ロート、ゲルブ。そしてなんと
リーラの国が記載されている。
しかし、リーラの国は約15年ほど前に
滅んでいる。
私は冷静にその地図を見る。
「ふむ、グリューンとヴァイスが
ブラウの自治区となっている。」
であるならばこの地図は約17年から
15年前に作られた地図である事が解る。
その二つの国は約17年ほど前の
「エンド討伐戦」において壊滅している。
小さい道具のような物を操作すると
その地図は細かくなっていく。
「これはブラウの国の首都の地図!」
城は勿論、その周辺の道路や建物、
宿屋から飲食店、全てが記載されている。
「完璧な地図、まごうことなき
ブラウの国の首都です」と私は言う。
美香さんは何か矢印のような物を
城に当てると、突然その地図は
城の中の地図に切り替わる。
私はその城の建物の地図を見て
「確かにブラウの皇女様が住まう
城の中です。」と伝える。
城の一階は完璧なほどの平面図。
そして二階も。
ちょっと待て!三階はその国の
役人か要人でないと入れない場所だぞ!
私は父に連れられて入った事があるから
解る。全く同じだ。
しかし、4階には入れなかった。
コレを作ったのはブラウの人間か?
城の他にも矢印を当て、建物の中の
平面図を出す。
全ての建物の中は見れないらしい。
折角なのでリーラの国も見せてもらった。
「完璧だ」と唸る私。
以前、父に連れられて行ったことがある
リーラの首都にある城。
噴水の位置、そして完璧なまでの
平面図。先ほどのブラウの城よりも
詳しく書かれており、なんと矢印を
当てると説明文まで浮かび上がる。
そしてなんと5階の王や王女の部屋まで
再現されていた。
感想を求められたので私は
少し興奮を収めてから答えた。
これは完璧なエアスト大陸の地図。
そして街並みです。城の中も完璧に
近いほどに再現されています。
「これはあくまでも私の推測ですが」
と前置きをしてから
これを作ったのは多分、
15年から17年前にエアストに居た
人物でしょう。そして相当、高位な
方です。何故ならば、一般人が
入れない場所まで再現されている。
そしてリーラの国のみ城の部屋の位置に
加えて説明文らしきものが出ます。
そしてリーラの城のみ王と王女の部屋。
「これを作ったのは
リーラの王家に非常に近い人物です。
間違いありません」
私は言いきった。
それとは別の所も説明をしてくれた。
完璧な街の配置、名称だった。
距離的なモノもほぼ同じだった。
因みにこれはVRRPGというゲーム。
ゲームというのは仮想的な空間で
その中の人物を操り、疑似体験できる
画期的なモノだった。
私は美香さんが操作をする人物を
見せてもらった。名前は
「ジヴァニア・ジュラック」
名前は最初からそれらしい。
そして「精霊使い」となっている。
もう一つ操作できる中の人物が
いるらしい。その名前を見せてもらい
私は絶句した。
「ベル・ジュラック」
私のいた世界では誰もが知っている
精霊使いの名前がそこにあった。
偉大で物語の主人公になるほどの
人物だ。
まさかの偶然なのだろうか。
「因みに」と美香さんは言うと
タクトらしきものを、いや、完璧に
タクトだ。それを使い、また別の
板の上に魔方陣を描く。
その魔法陣は淡い赤色を放つ。
私は使えないが知っている。
それは中級召喚に使われる
魔方陣だ。すごく綺麗で、そして
凛とした魔方陣。完璧だ。
美香さんは小さい黒いものに
「サラマンダ」と呟くと
画面の中にソレが現れた。
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