第2話 「リーラの国」というゲーム

その幻獣を操りながら美香さんは言った。

「私ね、ヘンなものがよく見えるのよ。

 まぁ、幽霊とかだけど。でもあなたは

 何かが違うわ。幽霊と。」


話を聞くとどうやら幽霊とは、攻撃的で

美香さんの体を乗っ取ろうとするらしい。

「統合」のようなものか。


美香さんには御婆ちゃんが居て

その方も見えるらしい。

そして、変なモノやちょっと違った

人間っぽいナニカを見かけたら

話しかける様に言われているらしい。


「何故?」と私は聞くと

「わからない」との返事。


でも友好的なモノであれば必ず

手助けをして仲良くなるようにと

言われているらしい。


そして連絡をよこすようにと。

「もう連絡しちゃったけどね」と美香さん。


「わ、私を解剖するとかしないですよね!

 しないですよね!?ね!?」


「しないわよ!勿体ない。私はね、

 凄く異世界とか、そんなものに

 興味があるのよ!もう大好き!」


「確かに異世界ですね、私はエアスト大陸

 と言う所から来ました。ここは何という

 国なのですか?」と聞いてみる。


「え?今エアスト大陸って言った?

 まさか、ブラウとかロートとかの

 国はないわよね」と笑う美香。


「ありますよ?ブラウもロートも。

 そしてゲルブも。」と少し

戸惑いながら私も答えた。


美香さんがエアスト大陸を知っている?

何故?私以外にも居るのだろうか。

そしてその者を知っているのだろうか。


「リーラの国もありそうね」と美香さん

と戸惑いながら言った。私は


「あるにはありますが、と言うよりも

 その国は15年ほど前に滅んでいます。

 しかしあったのは事実です。」


じゃあなおさら、私の家に来る必要が

ある。と美香さんは言い、さらに

見てほしいものがあるとも言った。


しかし、もううるさいくらいに幻獣は

雄たけびをあげ続けている。


「美香さん、もう少し幻獣を落ち着かせる、

 と言うか静かにさせる事は出来ないの

 でしょうか。話がうまく聞こえません」

と私が言うと


「幻獣?」と言うと少し沈黙して

「残念ね!私のこの幻獣は獰猛なのよ!」

そう言うと説明をする。


この幻獣の名前はバイク!本名は長いわ!

私しかこの子を動かせる者はいない!

そしてこの兜をかぶらなければ!

乗る事を神に許されない!


「なるほど、契約装備のような

 ものなのですね」と私は答える。


・・・少し、美香さんが笑った気がした。


道中、様々な異様な物を見かけ、その都度

美香さんに質問する私。


そうこうしていると何故か幻獣は止まる。

「休憩ですか?」と聞くと


「信号よ。」と答えたがすぐに言い直した。

あれはね、神の目よ。アレが赤くなった時

必ず止まらなければならないの。

他にも青とか黄の色もあるわ。


もしも、それを無視すると私は

神の怒りにふれ、この幻獣に乗れないの。

「神は何処でも偉大なのですね」と

私は頷く。が、なぜか美香さんは笑う。


※同刻 とあるマンション※


「そのゲームの事はすべて覚えた?」

と母さんは言う。


もうほぼ全てのスキルは使えるよ。

しかし、弓と刀しか使えないとか。

刀なんてスキルないし。


と俺は言うと母さんは

「勇樹さんは、それでいいの。弓で。

 弓の加護を受けているから」と。


「母さんや、俺さ。剣とかがいいんですよ。

 かっこいいじゃないですか、剣。

 それか槍とか斧とか」と俺。


そもそもだ!もうこれで何回言ったか

わからないが!大事なことだから

何度でも言う!


斧も槍もいろんな武器が

出てくるのになんで使えないんだよ!

ゲームとして破綻してるぞ!


名前もさ!決められないし!

まぁでも?この名前

「ジェニエーベル」って言うのは

格好いいからいいけども!


ちょっと怒りながら俺は言うと

母さんは笑いながら

「そうね、かっこいい名前よ。

 勇樹さんも恰好いいしね」と。


「そりゃもう、俺は母さんの子だしね。」

そう!勇樹はマザコンであった!


この「リーラの国」と言うゲーム。

そもそもレベルと言うものが存在しない。


強くなるには装備を変え、武器を変える。

同じ攻撃を繰り返すと「ピコン」と

言う音と共にスキルを覚える。


そのスキルを使い続けたり

他の攻撃を組合していると更に

スキルを閃いて行く。


敵は魔獣だった。弓で射貫くと

煙となり灰となる。そして魔核を

落としてそれを回収。


通貨は金貨、銀貨、銅貨。なんと

その三つしかない。

買い物の単位は、例えば

19800円とかではなく

金貨1枚と銅貨3枚。


といったような感じだ。

まぁわかりやすいし、ゲームなので

納得している。


しかしNPCはいるがほぼ

挨拶程度の会話となっている。

シナリオも無ければイベントもない。

しかし、面白いのだ。


クエスト。そう依頼がある。

山ほどある。

俺は冒険者となってその依頼をこなす。

ほぼほぼが魔獣討伐なのだが

それがリアルなのだ。


姿も弱点も。属性もすごく考えられ

ている。洞窟とかも迷路ではないが

分岐なども理にかなっている造りだ。


ボスもいる。一人で倒すには

苦労するが弓をいいモノに替えたり

装備を変えたりすると何とかなった。


それを母さんに言うと

「ひとりでボス倒せるんだ。すごいね、

 勇樹さんは。母さんは無理かなぁ」

と本当に嬉しそうに言ってくれる。


自身で数値化されているのは

体力と魔力。HPとMPとなっている。

これはゲームを作っている最中に

俺に聞いてきたのだ。


因みにこのゲームは世に出ていない。

母さんが趣味で作って俺が

好きでやっている。


このゲームの事は誰にも教えていない。

まぁ母さんにも口止めされているし。

多分だが、俺にデバッグ取りさせて

売るつもりだろう。


そもそも、弓しか使えないし

名前が変えられないという時点で

売るのは無理な気もする。


絶対に売れない自信がある。









 





 






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