エアスト大陸物語【紫の国 改正版】

erst-vodka

序章

第1話 成功か失敗か。

コルン・ブランドはそっと目を開ける。

目の前に広がるのは見慣れない風景。


「おおぅ。ここは明らかに私の国、

 ブラウとは違うな。」そう呟く。


眼の前にある造形物の感じが違う。

どの国にもこのような建物はない。

それに、ちらほらと居る人間の衣装が

違う。これも見たことがない。


「成功したのか!」


いや!まて!・・・。

私は体が無いのではないか?

・・・無いな。


じゃあ意識だけ転移したと言うのか。

魂だけとも言えるか。まて、

冷静になれ俺。可能性としてだ。


もしかしたら魔法を失敗して死んだ?

ここは死後の世界かもしれない。

だって・・・、体ないし。うん。


それとも魂のみ転移してしまったとか。

魔法が中途半端で、まぁ失敗だが。


そもそも、死んだことが無いので

死後の世界とか知らないしな。

うん。魂のみ異世界へ転移したと

思う事にしよう。だって!


死んだって思いたくないじゃないか!

いままで転移した者は魔方陣に

体も吸い込まれたと聞いている。


しかし、異世界へ行く途中で

魂と体が分離したとかも考えられる。

って事は、私の体は何処にある!


「わからない。さっぱりだ。」


取りあえず、魂だけでも来たのだ。

この辺りをうろついて情報を集めよう。


「なんか公園ぽいな。ベンチあるし。

 うぉ!でっけえ樹!それも2本も!」


この葉っぱは!ギンコの樹なのか!

ブラウ、いや。エアスト大陸では絶滅

した樹だ。すごいな・・・。


うん?その間にある建物に人間が

何かをやっている。


コルンは観察をしていると、ひとつの

事に気が付く。


「全員が同じやり方だ」


2回ほど頭を垂れると手を2度叩く。

ふむ、こちらの世界の祈りっぽいな。

という事はあの建物は神を祀ってるのか。


こんなに近くにいるのに人間は

私を見ないな。どうやら見えてないのか。


そしてコルンは振り向くと目の前に

「うぉ!山だ!湖の中に山がある!」


ってか噴火してるじゃねえか!

大丈夫なのか!・・・なんか大丈夫?

っぽいな、みんな平然としているし。

凄い風景だ。こんなところは知らない。


「確定だ。ここは異世界だ!」


よし、思いっきり近づいてみよう。

気づかれたら逃げよう。


「何をお願いしたの?」と女性が言うと

一緒に居る男性は頬を赤らめ

「言ったら願いがかなわないじゃないか」

と笑っている。


「なんと!言葉がわかる!」

これはありがたい。

他の人間の話も聞いてみよう。


「うーん、他愛のない世間話ばかりだな。」


まぁ確かに、ここはこんな所で

こういった世界なんて世間話しないか。


コルンは少しずつその場所から

遠ざかり、辺りの建物や風景、そして

人間の会話を聞いて回る。


「面白いなぁ、建物がそれぞれ違う」

よし、さっきの樹の所を根城にしよう。


そう言うと、コルンがギンコと言った

樹の所に戻っていく。


「さてさて、これからの計画を

 考えるか」

そう呟くとベンチの所へ行き上に乗る。

「浮いてるから座れないな・・・。」


さて、どうしたものか。と思案に暮れる。

ボォォっとしていると声が聞こえる。


「そこの幽霊君」と。

ふむ、幽霊か。死んだ者の幻影の事だな。

こちらの世界にもあるのか。


「それとも精霊君かな」とも聞こえる。

ほう、精霊も存在するのだな。


「このベンチにいるてめえだ!

 フワフワしてる!」と大きな声。


突然私の目の前にちょっと綺麗な女性

の顔が現れる。


「私が見えているのか!」と言うと

「というか聞こえるモノなのかな。」


「見えるし、聞こえていますよぉ」と

そのちょっと綺麗な女性は言った。


何とありがたい!というか攻撃して

こないよね!こないでね!

俺は悪い奴じゃないからね!


「あなた、その辺りに良く現れる

 幽霊とは違うね、何なの?そう、

 アニメっぽく言うと精霊ね」


アニメはわからないが精霊はわかる。

そうか、精霊っぽい何かで私は

こちらに転移して来たのか。


取りあえずこの女性と話をする事とした。

「私はコルン・ブラントと申します。

 転移魔法でこの世界に来ましたが、

 どうやら体を落としたみたいです」


「え!?転移魔法!この世界ってことは

 異世界から来たの!?」と

その女性は興奮気味に鼻息荒く言う。


「私は美香。加納かのう 美香みか。よろしくね、

 コルン・ブランドさん」


「コルンでいいですよ。こちらこそ

 よろしくお願いします」


「色々聞きたいことが」と二人同時に言う。


「ここじゃ何だから私の家に来ない?」

ここじゃ独り言言ってる変な女って

見られちゃうかも。と美香は言う。


コルンは「そうですね、こちらこそ

お願いします」と言うと美香について行く。


階段を降りると、そこには

鉄?で出来た馬車のような箱や

ゴーレムなのか、鉄?で出来た

馬っぽい何かがあった。


美香は馬のような、それでいて

ゴーレムのようなモノに近づき

それに跨った。

衝撃的な咆哮が聞こえる。


やはりゴーレム!いや、これは

まさかの幻獣だったか!

初めて見た!向こうでも見たこと

なかったのに!

とコルンは興奮する。


「行くわよ!ついて来て!」と

美香は言うと・・・。もう何処行ったか

見えなくなってしまった。


数分後、美香は帰ってきた。

「・・・。この鞄に入れるかな。

 というか、入ってよ」と。


私はその袋っぽい鞄に入る。

「窮屈ですが大丈夫です。でも

 閉じないでください。

 少しはみ出てる気がします」


「はみ出てるわよ。質量はあるのね」

と美香は言うと今度こそ二人で

走り出した。





※ほぼ同じ時刻 とあるマンション※


俺はVRRPGゲームをしていると

母さんの部屋から声が聞こえる。

母さんは最近病気がちで今日も

ベッドに寝ていた。


勇樹ゆうきさん、もしかしたら帰れる

 かもしれないよ?エアストに。」


「母さんや、それは貴女が作った

 このVRRPGゲームの世界だ・・・。」


俺は知っている。母さんはガチの

ヲタクという事を。












 














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