第42話帰還
凱旋パレードを望遠鏡で見ていると、マリー先生に取り上げられた。
「エスメラルダ王女、お時間です。」
戦地では呼び捨てだった癖に、何でここでは敬語なのよ?でも、深く考えたら消される気がする…。
知らない方が良いことってあるものね。
凱旋パレードを迎える為、私達は神話の世界をモチーフにした真っ白なドレスに月桂樹で作った冠を被っている。ミランダなんて、天使そのものだ。まあ、中身は小悪魔ですが。
城門をくぐるパレードへ真っ白い花を投げかけた。
あの、出兵見送りの時を思い出す。
戦争が無くなった。その喜びが胸に溢れた。
パーシヴァル様がこちらを見上げて、笑いかけてくださる。そして、しょうがないなという顔でその純白の軍服の胸ポケットを拳でとんと叩いた。
あれ?私、もしや泣いていますか?
私の頬を静かに涙が伝っていた。
凱旋パレードを終えたリチャード将軍とパーシヴァル様は国王の私室に呼ばれた。非公式な論功行賞の取り決めをするのだろうか。
パーシヴァル様見たさに私も入ろうとすると、老宰相に止められた。
狸爺いめ、私が女王になった暁には、その僅かに残った頭の毛一本残らず全て毟ってやるから覚悟するがいい。
まあそれまで、せいぜい長生きしろよ、狸爺い。
何か揉めているのか、非常に長い時間が経っている。
国王陛下、ここはケチらず、ドーンと褒賞をあげてくださいな。
あれ?私、もしやタダ働きですか?
あんなに働いたのに、魔力補給もしてもらってないし。
乙女の夢を踏みにじるとは、赦せん。
国王陛下の私室の扉を恨みがましく見つめる私のそばで、バカップルがいますよ、バカップルが…。
家庭教師のマリー先生が呆れ果てた目で見ている。
妹よ。パーシヴァル様不足の姉の前でいちゃつくんじゃない。これ以上いちゃつくと、独身女王になった暁には、君たちに地味な嫌がらせをするよ。
二人が歩いている道に馬糞を落とすとか。
長い話し合いの後、リチャード将軍とパーシヴァル様が晴れやかな顔で出てきた。
パーシヴァル様が???、嬉しそうに微笑んだ。その瞬間、私の心に堆積していたバカップルへの呪いは霧散した。
パーシヴァル様の晴れやかな笑顔に私まで幸せいっぱいだ。涙が溢れてきた。
パーシヴァル様がおいでというように手を拡げて下さったので、私はその胸に飛び込んだ。
私の涙は、パーシヴァル様の胸に閉じ込めて貰う約束だから。
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