第41話凱旋

「イスパニア撤退。次期女王エスメラルダと若き英雄パーシヴァルの巨大な氷の壁の前に戦意喪失!」



 新聞に踊る文字に喜びが溢れる。




 ええ、パーシヴァル様の水の壁は見事でしたのよ。いつか皆さんもご覧になるとよろしくてよ。



 私が万が一にも溶けないようにガッチガチに固めて参りましたので。きっと、明るい所でみると、太陽の光を反射して美しいことでしょう。



 私も、早く推しの偉業をキラキラの太陽の中眺めたいですわ。




 パーシヴァル様の戦いぶりも素敵でしたわ。



 間近できっちり観察した私が言うのですから間違いありませんわ。


 いつかアメリア女王の生配信技術を私、完コピしてみせます。もちろん、記録技術もあるに決まってますわよね。きっちり探しだして見せますわよ。




 あの夜昏睡状態になった私はマリー先生が王宮に連れて帰ったらしい。魔力補給は?パーシヴァル様は?



 マリー先生は、無言のまま鉄剣で素振りしている。




 マリー先生、あなた一体何者ですか?



 魔力は、状態保持しか使えないっておっしゃってらしたけど…。あの広範囲に強力な状態保持をかけるって並大抵じゃないと思うの。




 なのに、新聞にも、何も記事も名前も出ないって…。



 深い闇を感じるわ。




 今日は凱旋パレードだ。イスパニアが完全撤退するまで、軍は国境に駐在していたから、半年ぶりの帰還だ。


一番前をリチャード将軍が軍馬に乗って進む。



 漫画でのリチャード将軍は、屍となって凱旋する。



 危機に陥った甥のパーシヴァル様を命を賭して守り抜くのだ。そして、あとを託されたパーシヴァル様が将軍となり、その力を発揮してイスパニアを撃退し辛くも勝利を手にするのだ。



 その凱旋は、パーシヴァル様の苦悩に満ちた影のある表情が素敵ではあったけど、痛々しかった。同じく国土も戦禍の爪痕が痛々しく残っていた。


 しかし、国境際で敵の侵攻を阻んだ今は、国土にも国民にも酷い影響は、感じられなかった。


パレードを見送る国民も色とりどりの衣服に身を包んでいて、活気がある。



 リチャード将軍の斜め後ろを進むパーシヴァル様はすっきりと晴れやかな笑顔が素敵だった。儀礼用の真っ白の軍服が堪らなく美しいわ。漫画では、真っ黒の軍服だったものね。



 にこやかに手を振る姿に沿道から黄色い歓声が響く。



「パーシヴァル様、万歳!エスメラルダ王女、万歳!」


おや、パーシヴァル×エスメラルダ推しですか?


 


 よい趣味だと思いますよ。同志よ、私も是非仲間に入れてくださいな。共に薄い本を作りましょう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る