第39話海峡封鎖
マリー先生は、イスパニア側の港は狭いと言ったが、なかなかのものだぞ。ランスの港よりは狭いけど。
取り敢えずあちらの軍艦が身動き出来ないよう、軍艦の舳先だけ凍らせるよう指示を受けた。椅子にパーシヴァル様と腰かけ望遠鏡で覗くと戦艦2隻に駆逐艦10隻がぎっしり停泊している。
魔力切れで倒れないように、パーシヴァル様が後ろからがっちり抱えこんでくださる。前世あわせて人生初のバックバグに、不謹慎ながら笑いが込み上げる。暗くて良かった。
「エスメラルダ、何をにやけておる。さっさと凍らせて、魔力補給してもらえ。」
そうよ。私の目標は、この程度ではないわ。
魔力補給よ。推しとの思い出の1ページを残すのよ。
魔力、たっぷり使うわよ。
集中して、一番大きな戦艦の舳先を凍らせていく。
「エスメラルダ、もういい。」
はっと気がつくと、マリー先生が状態維持の魔法を重ね掛けしていた。
「あれ以上、凍らせるとうちの海産物に影響が出る。」
マリー先生、シーフードがお好きですものね。
軍艦が停泊していた港がすべて凍っていた。
私の魔力は、まだまだ大丈夫そうだ。しかし、パーシヴァル様に補給して貰わねば。
「パーシヴァル様、私、魔力補給を…。」
「エスメラルダ、まだまだ暴れたりないようだな。」
マリー先生が怖い。鬼軍曹がここにいますわよ。
パーシヴァル様が私の頭をそっと撫でてくださった。
「補給しようか?」
ええ、頂きますわ。こくんと促ずく私に。マリー先生は追い打ちをかけた。
「エスメラルダは放っておけ。パーシヴァル、一瞬でいい。あの港を水の壁で覆えるか?」
「はい。やってみせます。」
さっき凍らせた軍艦のあたりに水の壁を作るらしい。一瞬とはいえかなり大変だ。単に凍らせるのとは違う。
パーシヴァル様、魔力切れを起こした暁には、このエスメラルダが補給して差し上げますわ。
「エスメラルダ、お前はパーシヴァルの作った水の壁を凍らせろ。チャンスは一瞬だ。良かったな、初めての共同作業だ。」
初めての共同作業。なんと。
マリー先生、もしや、やる気スイッチを入れる天才ですか?
その甘美な響きに私はやる気を漲らせたのだった。
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