第12話 バーベキュー

獲ってきた獲物をパーシヴァル様とジャンが捌く。


ジャンがうっかり飛ばした鮮血がパーシヴァル様の頬にかかる。



 ジャン、パーシヴァル様になんてことを。


 いや、流れる鮮血に彩られたパーシヴァル様の整った顔がなんか魔王じみてドキドキしてしまう。


 あんな魔王様に平伏したい。いかん、妄想が倒錯してきたぞ。


 ジャンが手にした布巾でパーシヴァル様の頬の血を拭う。



 くぅー。ジャン、お前もなかなか美形なのだよ。


そんなことしたら、ますます妄想が捗るではないか。


 ジャン、罪作りなやつめ。



「お姉様、ジャン様を見て何にやけてますの?」



 ミランダよ、誤解だ。姉は貴腐人ではないぞ、若干嗜む程度だ。そこまで腐ってはおらぬよ。ほんとだよ。



「お姉様は、パーシヴァル様だけを見てらして。ジャン様は、絶対にお渡ししませんわ。」



 あのー、誰かここに生まれながらの悪役令嬢がいらっしゃいますよー。





 パーシヴァル様が作って下さったお料理を美しいマナーでお父様にサーブした。


 素敵、こんな執事が欲しい。


 流れるような動作で次々にサーブしていく。



「鹿肉のローストです。召し上がれ。」


 パーシヴァル様が私の耳元に囁いた。



 思わずパーシヴァル様の方を見ると、こちらをチャーミングな笑顔で見てらした。あー、可愛い。


 さっきまでの真剣な表情からのギャップにやられる。



 推しの作ってくれた料理をいただける事に感動しながらナイフを入れた。


 火の入れ方が絶妙な美しいピンク色の鹿肉はすっとナイフが通る、驚く程柔らかい。口に運ぶと、絶妙にスパイスが効いて全く臭みのない逸品だった。



「パーシヴァル君、この鹿肉のローストは素晴らしく旨いな。」


 お父様が嬉しそうに微笑む。



「バーベキューとは思えない程、繊細なお料理ね。」


 グルメなお母様もそう思われますか。



「ありがとうございます。」


 パーシヴァル様がにこやかに微笑んだ。



 ああ、なんと爽やかな。


皆様、このお肉は私の為にパーシヴァル様が獲ってきたものなのですよ。(便宜上かもしれないけど…)


 心してあじわって下さいませ。ミランダも、私の推しのお料理心して味わいなさいな。




 ん?


 ミランダよ。なぜにバーベキューコンロの横でジャンと一緒にウサギのローストを焼いているのだ?


 そこにはキャッキャウフフのリア充なバーベキューの光景が広がっていた。



 やはりミランダは、一枚上手であった。



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