第11話 狩猟
狩猟は貴族の娯楽である。
自領で採れた肉や果物などを、思う存分いただくのだ。
パーシヴァル様とジャンは動きやすそうなシンプルな装いだが、元がいいので素晴らしく映えている。ヒーローと当て馬が仲良さげに並ぶと迫力があるわ。
「お姉様、ジャン様が私の好きなウサギを仕留めて下さるのよ。」
ウサギ、食べるのね。
美味しいんだけど、前世可愛がってたぬいぐるみを思い出して少し切ない気分になるんだよな。ましてや、今、自由に生きてるのに、狩りで狩られるんだよ。
しかしながら、生粋のご令嬢である妹にとってはウサギ=大好物なのである。
妹はジャンに手を振った。淑女としてその振る舞いはよろしくなくてよ。
ジャンも嬉しそうに手を振り返している。このロリコンめが。
妹は中身はアレだが、外見だけは天使そのものだからな。
その時、ジャンの横にいらっしゃるパーシヴァル様がふとこちらを見た。瞬間、私も淑女をかなぐり捨てたのだった。
手をぶんぶん振る。
すると、パーシヴァル様もにこやかにこちらに手を振って下さった。パーシヴァル様、ファンサ最高です!このエスメラルダ一生忘れませんわ。
感動にうち震えながら手を振り続ける私を、マリー先生が注意することを放棄して、そっと距離を置いたって気にしませんわ。
約束通りウサギを仕留めてもらったミランダはご機嫌である。その毛皮で襟飾りを作るのだそうだ。良かったね。
パーシヴァル様は、大きな牡鹿を仕留めてらした。
素敵!
パーシヴァル様は、私の前にひざまずいた。
「レディ・エスメラルダに私の狩りの成果を捧げます。」
素敵すぎる。絵本の王子様がここに存在しますわよ。ジャンがミランダにウサギを捧げたから私に恥をかかせまいと便宜上の優しさなのかもしれないが、演技でも推しにこのような振る舞いをして貰えるなんて…。ミランダ達ありがとう。
私、今日の思い出にこの立派な牡鹿の頭を剥製にして飾っても良くてよ。でも鹿さん、夜中に目を合わせないでね。怖いから。
パーシヴァル様に手を差し出す。手の甲にキスが落とされた。途端にビリビリと稲妻が落ちるような感覚が襲う。あまりの衝撃に固まった。推しのキスってやっぱり威力半端ないわ。
あ、喜びのあまりなんか力が湧いてきた気がするわ。士官学校で手が触れた時もこんな感覚があったけど、今日の方がすごいかも。
その不思議な感覚についてその時私は全く深く考えていなかった。
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