第9話 招待



 


 先日の観劇のお礼を考える。


もうすぐ聖誕祭の季節だ。


 前世でいうところの、クリスマスとお正月を合わせたような家族と過ごす大切な日。



 パーシヴァル様の孤独…。


 小説のパーシヴァル様は、主人公ダリアと出会って初めて聖誕祭を誰かと過ごせたと喜んでいたけど…。



 パーシヴァル様の生い立ちは複雑だ。


古い歴史を誇るガリアの王子として生まれたが、生後すぐに隣国イスパニアが侵攻。亡命したおかげで命は助かったものの、パーシヴァル様のご家族は崩壊してしまった。


 年の離れたお姉様方はみんな外国に嫁いでしまい、お母様はご病気で静養。お父様に至っては愛人を作ってパーシヴァル様を顧みなかった。


 幼いパーシヴァル様は経済的には困らなかったけど、精神的には孤独のうちに育たれたそう。そんな中でも聖誕祭の時には親戚の家を転々としていて、寂しさが募ったと、漫画に書いてあったわ。



 そんなパーシヴァル様を我が家の聖誕祭にお招きして癒して差し上げたい。なんて、自分がパーシヴァル様と聖誕祭を過ごしたいっていうかなり不純な動機なんだけど、何か文句あるかしら?



 方針が決まったら、お父様におねだりだわ。



「お父様、ジャン様を聖誕祭にお呼びしたのです!」



 ミランダよ。おねだり前に呼んだんだね。


断れない状況に追い込んで、おねだりか。


 それを、前世では確信犯というのだよ。



「お父様、私もパーシヴァル様をお呼びしました!」



 してないけど。


 これを前世では模倣犯という。偽証罪も加わるけどね。


 お父様は、やられたってかんじで天井を、見上げため息をついた。


 身体が弱くて、カリスマとか全くないけれど、私たちに甘くて優しいお父様。大好きですわ!



 早速、お手紙を書く。


ああ、パーシヴァル様への愛が止まらない。


 家庭教師のマリー先生が封筒を指差した。もうこれ以上は、封筒に入らないから止めろってことね。


 わかりましたよ。



 マリー先生の諦めきった視線を背に手紙を封筒に入れて封蝋を垂らす、書ききれなかった残りの愛をこめて私のシグネットリングをぎゅうっと押し付けた。



 ずっしり重い手紙を受け取ったマリーが呪いの手紙を見るような怯えた目で見ていたけど気にしないわ。



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