第3話 校内案内




 パーシヴァル様が学内を案内してくれる間、すかさずにお父様の手を取る。


 全ては彼を間近で見るため。


ラッキー、横顔がバッチリ見える。



 私は、彼を見上げた。


漫画のパーシヴァル将軍も士官学校に行ってたって、主人公ダリアに語ってた。


 確かそこで劇をしたのよね?


神話の若い男性神だったかしら?



 ああ、見てみたい。


もう、パーシヴァル様を食い入るように見つめていると突然、目があった。



 推しに見られてる。


かぁーっと顔に血が上った。


 悪役令嬢が持つような扇子が欲しい。あれがあれば、視線など気にせず推しを見放題なのに。


 でも、こんなチャンス二度と無いかもしれない。


 絶対に目を逸らさいんだから。



 彼の説明は流れるように流暢でわかりやすかったと思う。たぶん。


 私は、彼の顔と声を聞くのに精一杯で一切、士官学校の中を見ていないからわかんないけど…。



 そんな私に気を使ってくれたのか。


彼は私と妹のミランダをテニスに誘ってくれた。


 


 一瞬、パーシヴァル様と少し手が触れる。ビリビリと身体中が痺れるような感覚がした。


 やっぱり推しの力は素晴らしい。推しによる感電死なら、本望ですわ。



 マリー先生は、無表情で『ただの静電気です。』と夢も希望もないことをおっしゃるけど…。


 静電気違うもん。もっと甘いキラキラした恋の何かなんだもん。お願い、夢を見させて!そういうことにしてくださいな。



 パーシヴァル様は私達と一緒にボールとラケットで軽く遊んでくれた。その後、他の学生とのテニスの試合を見せてくれた。私はその姿を堪能する。


 はじける汗がキラキラの輝く金色の髪に反射してる。


長い手足から繰り出されるサーブが決まる。



「カッコいい。」



 前世とは違う。私は13歳、若いのだ。思う存分ミーハーしてやろうじゃないか。



「パーシヴァル様って素敵。ねぇ、あなたもそう思わない?」



私は、同担拒否などしない。推しを布教し共に盛り上がりたい。マリー先生も私の推し活に入りませんか?



 そんな全てを諦めたような目で見ないで。



「パーシヴァル様、とても素敵でしたわ!」



「ありがとう。レディ・エスメラルダ。」



 にこやかに微笑まれるお姿にきゅんとする。ああ、そのタオルになりたい。


 名前を呼んでいただけるなんて。光栄のいたり。


同じ世界で生きていけるなら、当て馬女王も悪くないかも。女王になる確率はほぼないけど…。



 極めてやろうじゃない、推し活!


情報は、全てを制すってパーシヴァル将軍もおっしゃってたわ。



「パーシヴァル様~。」



 私は、丸1日パーシヴァル様についてまわった。


結局、二時間だけの学内の案内係だったパーシヴァル様は、一泊二日の間中案内係として、ずっと側にいてくれることとなった。


 お父様の目的だったリチャード将軍が風邪で案内できなかったのも幸いした。甥のパーシヴァル様を案内係に任命してくれるなんて。ありがとう。



 家族の呆れたような目も最早気にならなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る