迫る四公爵の子供達
ライズは、無言でノイズにされるがままにされていた。朝食は、屋敷の一流シェフが作るので、作る必要がなくなったからだ。なお、嫌そうな雰囲気のライズを困った雰囲気で笑いながら見ている。
「ライズ、おはよう。準備出来た?ご飯行こう!」
ウィルが、ゾロゾロと引き連れてやって来た。
「おはよう、ウィル。分かった、行く。」
ノイズとシルバが、無言でついて来る。朝食は、ここにノートルもくわわり、3人で朝ご飯。
何だけど、凄く視線を感じる。
「そう言えば、明日は四公茶会の日なんだけど。勿論、ライズは行くよね?その反応、知らない?」
ウィルの会話に、無言で頷くライズ。
「まずいね、服の用意とかいろいろ…間に合う?」
無理だと、ライズは首を振る。
「だよね。うーん、今日でも買いに行く?」
「もう、欠席で良いと思う。そもそも、招待状も貰った事ないし。お呼びでは無いってことでしょ?」
ライズの言葉に、2人は残念そうであった。
「なら、僕の買い物に付き合ってよ。」
ウィルは、思うところがあるのか言う。
「ごめんね、予定があるから。」
「……また、商会?今度は、冒険者?」
不満そうに、不機嫌な口調で言う。
「残念、聖職者としてのお仕事だよ。」
ライズは、素っ気なく答える。ウィルは、納得。
馬車に乗り、小さくため息を吐き出すライズ。ここ最近、ウィルがグイグイと近づくので、油断も隙も見せられない。ノートルも、かなり会話したがる。
何故だ…。2人は、僕の体については知らない。
だから、そっちの線は無いと思うんだ。
ウィルは、僕が近づく事を嫌がってたし。ノートルなんて、見下して馬鹿にしていたはずだ。
教室に入り、考えを放棄して席に座る。ウィルが、少しだけ怒った雰囲気で机の前に立つ。
「何で、先に行っちゃうのさ。」
「ウィル、君って僕が近づくの嫌いなんでしょ?」
すると、教室が静まり返る。
「教室で、複数の生徒に言ってたよね。僕も別に、暇なわけじゃないし。だから、合わせないよ。」
すると、ウィルは無言で考えて言う。
「それは、ごめんなさい。ライズが、僕の病気を気にかけて近くに居たって知らなかったんだよ。」
すると、クラスメイトの雰囲気が変わる。
「そう。うん、分かった。」
ライズは、本を出して自分の世界に入ってしまう。
「いや、分かってない…。どうすれば、距離が縮まるんだろう。凄く、モヤモヤするんだけど。」
ウィルの呟きに、数人がエールを送るのだった。
「ご機嫌よう、ライズ様。」
ライズは、本から視線を外して令嬢を見る。四公爵で、魔導士のお家クロイツ家のリーチェ令嬢だ。
「ご機嫌よう、クロイツの魔道姫が何か?」
すると、意味が伝わったのか苦笑する。
「ライズ様、緊急で申し訳ないのですが…」
「予定があります。」
遮ったライズに、険しい視線を向ける一部男子。しかしながら、不手際を起こしたのは令嬢側である。
よって、この対応は正しい。
同格のお家なのだ、何なら王家の血が入っているロイナ家が四公爵で1番偉い。不手際で、いきなり来いとは舐めていると思われても仕方ない。
「その、どうにか出来ませんか。」
「申し訳ない、せめて数日前にでも声をかけてくれたら調整したのですが。いきなりは、ちょっと…」
言葉を濁すライズに、リーチェは無理だと判断。
「そうですか、ではまたお声をかけますわね。」
残念そうな雰囲気で、引くがこれで終わりじゃないのだった。2人の男子が、近づいて来ている。
さては、お父様…貴族を恨んでる云々を教えた?
だとしたら、この対応にも納得が行く。面倒だな、一旦席を外すか。もしかして、ウィルも知ってるから構ってるとか?だとしたら、本当にやめて欲しいんだけど。余計に、傷つくだけなんだから。
お昼に、教会本部から迎えが来ると来た。伝書鳩に手紙を預け、時間をどう潰そうか考える。
「取り敢えず、個室でも借りてお茶するかな…」
うっかり、心の声が溢れてしまう。視線を感じて、思わず口を押さえる。一人暮らしは、独り言が増えると言うけど…。まあ、言ったものは仕方ない。
「ライズ、僕も一緒にお茶して良い?」
「まあ、迎えが来るまでなら。」
すると、嬉しそうなウィル。
「もし良ければ、俺達も良いかな?」
3人が、来る。どうせ、10分ちょっとだしな。取り敢えず、紅茶くらいなら毎日淹れてるし。
「何?」
視線を感じて、聞き返す。
「いや、その…なんでもない。」
「そう。」
紅茶を出して、茶菓子はどうしようか考える。そして、ウィルを見る。ウィルは、甘いお菓子が大好きなのである。うーん、どうせならアレかな。
「ライズ、これはお菓子なの?綺麗!」
ウィルは、目を輝かせて言う。
「とても、美しい彫刻がされてますわね。」
そう言うと、興味深そうにチョコレートを食べた。すると、驚きの声と素晴らしく純粋な笑顔。
「ライズ、これ何処のお菓子?」
「確かに、見た事ないな。」
ライズは、メモを直してから言う。
「福猫商会のだよ。」
すると、4人はキョトンとする。
「正確には、一ヶ月後に発売予定の新商品。」
ライズは、ここで内緒のジェスチャー。
「で、でも!良いんですの?」
「商会員は、発売一ヶ月前から買える。だから、これは犯罪じゃないよ。ただ、トラブルは避けたいかな。だから、内緒ねって話だよ。お願いね?」
すると、4人は無言で頷く。
「商会長も、貴族のリアクションを気にしてたし。これで、受けは良いって報告が出来るかな。」
言外に、自分の利にもなるから気にするなと言う。4人は、理解したのか嬉しそうである。
「ライズ君、やっぱり友達になろう!友好を深めたい、細かな気遣いが出来て知的で優しい君と!」
ライズは、何言ってるの?この人…って雰囲気だ。
ウィルは、そんなライズを見て苦笑する。貴族3人は、真剣なのだが。いまいち、ライズに伝わらないのだ。ウィルは、深いため息を吐き出した。
「ライズ様、お迎えに参りました。」
すると、雰囲気が変わるライズ。
「分かりました。すみません、遠いのに…」
申し訳ない表情で、苦笑して言えば問題ないと微笑む牧師さん。ライズは、ホッとしてから微笑み返して歩き出す。4人が、固まっている事に気づかず。
「じゃ、仕事に行くけど気をつけて帰ってね。」
そう言って、振り向いてキョトンとする。そして、無表情じゃないのを見られたと察する。けど、この場合は牧師さんに冷たいと思われたくない。そっちが優先だし、何より怒る人は居ないのだから許して欲しいものである。そう、思い無表情になる。
4人が、慌てたのは言うまでもない。
せっかくの笑顔が、消えてしまったのだから。ライズは、小さな息を吐き出して歩くのだった。
これ以上、待たせる訳には行かないからだ。
ウィル達は、お茶会を続ける気になれず。せっかくだからと、チョコレートを持ち帰るのだった。
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