訪問者

さて、今日は休みである。


早朝の仕事を終わらせ、紅茶を飲みながらため息。最近、本館の方で人の入れ替えがあった。


お父様に、帰って来ないかと言われたのだけど。


勿論、帰るつもりはない。と言うか、帰りたくないので拒否した。そしたら、朝にノートルが来た。


「ライズお兄様…。」


びっくりした、紅茶を吐き出さなかった僕を誰か褒めて欲しい。いきなり、どうしたのだろう?


「その、今迄ごめんなさい。その、ウィルお兄様に言い寄る人達を見て気がついたんです。」


「えっと、何に?」


ライズの言葉に、ノートルは涙を浮かべる。


「ライズお兄様が、ずっと守ってくれてた事。あんなに、酷い言葉を吐き続けた僕さえも守って。」


ライズは、無表情に紅茶を飲む。


「家族として、当たり前でしょう。」


「…兄様、そろそろ長期休みですよね。」


ノートルは、窺う雰囲気で聞く。


「そうだね。」


「実は、ちょうどサーカスが来ているみたいで。もし良ければ、一緒に行きませんか!駄目ですか?」


とても、ドキドキした雰囲気で言う。


「……駄目ではないけど。」


困惑した雰囲気で、ティーカップを置く。ノートルは、目を輝かせている。当日券で、入るので早く出掛ける事になると言って、ノートルは嬉しそうに屋敷に帰って行った。ライズは、息を吐き出した。




今日は、約束通り文字の読み書きや計算を教える。そのため、少し急いで教会へ向かっている。生きる為に、必要な知識だと知っているのか、皆んな真面目に真っ直ぐ向き合ってくれる。ライズは、無表情の仮面を取払い。優しい笑顔で、教えていた。


そして、暫しの休憩時間である。目の前には、金髪で緑の瞳、眼鏡をかけた爽やかなイケメン。


ライズは、伸びをしてから遊ぶ子供達を眺める。現在は、休憩中で子供達は遊びに出掛けている。冒険者達との、交流の機会でもあるので木の影にいる。


「やあ、御使大聖。いや、ライズ君と呼ぼうか。」


教皇様、なんて奴を寄こしてくれたんだ。


「何で、異端審問会最強が居るのかな?」


「おいおい、一応は秘匿されてる組織なんだ。そう軽々しく、名前を出さないでくれるかな?」


聖職者の組織で、秘匿される組織は御使と異端審問会の2つ。その、2つの最強が都心から離れた教会に揃っているのだ。それは、ライズも困惑するだろう。何で、お前が居るんだよと言いたくもなる。


「君の護衛であり、監視役だけど。」


「僕、何か悪い事した?」


ライズは、考える雰囲気である。


「君の母は、教皇様のお気に入りでね。娘みたいに思ってて、だから君の事も孫みたいに思っているみたい。だから、今の君の状況をよく思ってない。」


「……なるほど、堕天を心配してるのか。」


すると、苦笑する青年。


「それもあるけど、純粋に孫が傷つくのが見てられないらしいよ。それと、誕生日パーティーに自分を呼んでくれるか。ここ最近、ソワソワしてる。」


最後らへん、ほっこりしながら言う。


「しないつもりだった…。」


視線を逸らし、呟けば頷く青年。


「だと思ってた。だから、招待状を貰いにきた。」


「リド、やらないと駄目かな…。」


とても、嫌そうにいうライズ。


「最近、手を貸して貰った手前…呼ばないの?」


ライズは、嫌そうに呻くのだった。


「まあ、俺は良いがな。あの方、絶対に泣くぞ。」


「ダヨネー。まあ、うん…分かった準備する。それと、猫被らなくて良いの?牧師さん…。」


ライズは、思わず笑いながら言う。


「お前相手に、猫被ってもな…。」


「何なら、いつまでも被ってても良いんだよ?」


冗談っぽい雰囲気で言えば、笑いながらうるさいと言われる。そして、暫く雑談して解散した。




さて、福猫商会にてアキトに相談してみる。何も考えて、いなかった訳ではないが。それなりのパーティーには、かなりの時間がかかる。そしたらね、何かもう凄い事になってしまった。少し後悔中…。


知り合い全てが、全力で協力的なのである。


「任せろ!」


「待て待て待て!君ら、落ち着いてくれる?」


そして、ライズを放置して素晴らしい内容がまとまる。日々お世話になってる、ライズに何か返そうと全員が気合いを入れて動いてるのであった。


「会場のデザインよし。食事も、超一流の大物シェフを確保。食材も、皆んなどんどん持ってくる。」


「もう、勝手にして…。」


ライズは、苦笑してみまもるのだった。




次の日、お仕事を終わらせてお茶の時間帯。


「ライズ、お前まさか…誕生日パーティーに私を呼ばないとか無いよな?まさか、しないとかも。」


セナムは、深刻な雰囲気である。


「しない予定でしたが、事情が変わりました。」

  

無表情で、紅茶を飲んでから言う。


「図々しいと、思うだろうが…招待状は?」


セナムは、不安そうな雰囲気である。ライズは、立ち上がり手紙を渡す。安堵の息が、周りでおこる。


「良かった。呼ばれなかったら、流石に落ち込んで寝込む所だった。私は、とても嬉しいぞライズ。」


「仮とはいえ、現在の主ですから。」


ライズの言葉に、苦笑するセナム。


「本当に、お前は手厳しいな。少しは、笑顔でも見せてくれても良いんだぞ?仲良くして欲しいし。」


セナムは、苦笑しながら言う。


「……仲良くしません、諦めてください。」


ライズは、素っ気なく言って片付けるのだった。


「まるで、野良猫…警戒心のかたまりだな。」


落ち込んだ雰囲気で、机に突っ伏すセナム。周りのメンバーは、困った雰囲気で笑うのだった。


手紙は、全て渡した…。あとは、なる様にしかならないよね。取り敢えず、やる事はやったし。何か、やり残した事は…手帳で確認してもなさそう。


ライズは、ため息を吐き出して帰るのだった。

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