気になる書類
ライズは、書類を仕分けている。まだ、殿下達は来ていない。ふと、気になる書類を見つける。
いつも、お祈りしている教会からだ。
孤児の死亡率、その高さが酷くなっていると。何かしらの対策と、援助を願いたいと書かれている。そもそも、何が主な死亡原因なのか。個人的に、気になる。取り敢えず、殿下がどう動くかだよね。
窓を閉めて、資料を取りに行く。
戻ると、殿下達が珍しく早く来ていた。資料を置いてから、挨拶して自分の担当であるお仕事を終わらせる。殿下は、教会の書類を見て困った雰囲気だ。
ああ…、これは動かないな。
「動きたいが、動けないんだ。」
「そうですか。」
まあ、理由があるのは理解した。さて、早く終わらせて時間を作るかな。全て終わらせ、無言で立ち上がる。基本的に、仕事が終われば何してても良い。
「もう、終わったのか?」
「少しだけ、用事があるので頑張りました。」
セナムの言葉に、ライズは素っ気なく言う。
「そうか、時間内には戻ってくるんだぞ?」
ライズは、短く返事をして出掛ける。
まずは、教会に向かいシスター・リアに声を掛けて話を聞く。話しを聞いて、真剣に考える。取り敢えず、主な原因は餓死と病死である。やれやれ…
孤児である彼らは、読み書き計算が出来ない。
だから、実りの良い仕事を見つけられない。報酬額を、減らされても分からない。騙されて、最後には良いように使われ殺されてしまう事もあるそうだ。
取り敢えず、読み書き計算は僕が教える事にしようかな。取り敢えず、休日だけ祈りの後にね。
さてと、そうなると他にもする事が増えたね。
冒険者ギルドに行こう。子供達が、少しでも自衛できるように引退した冒険者。または、怪我で活動が出来なくなった冒険者を融通してもらい、引っ張ってこよう。これで、冒険者としての戦闘や知識も高まり死亡率も下がるはず。お金は、僕が支援する。
冒険ギルドマスターは、驚いてから笑うと頷く。
ついでに、知り合いの冒険者達に見かけたら気にしておいてと頼む。優しい彼ら彼女らは、朗らかに任せろと笑いながら頷く。ライズは、お酒を奢る。
さて、次は教会だ。
教皇様に、お願いしてみた。出世願望のない、治癒師を教会に派遣してくれるそうだ。そのかわり、お母様の仕事を引き継ぐ事になってしまった。
まあ、やる事はいつもと変わらないけど。
国の土地、その浄化とお祈りである。聖銀とサファイア、そして百合の彫刻が美しく刻まれたロザリオを渡された。実は、神託で渡す様に言われたとか。
また、仕事が増えてしまったけど。
けど、上手く行けば子供達の未来は明るい。僕は、僕に出来る事を頑張るだけだ。そして、全て順調に進んで行ったら。誰かに放り投げて、だらけるぞ!
目指せ、自由自堕落生活!
さて、そろそろ戻らないと。今日は、バタバタと動き過ぎて疲れたなぁ。甘いお菓子でも、帰りに買って帰ろう。とびっきり、甘くて美味しいやつを。
取り敢えず、お茶の時間なのでお茶を準備する。
「随分、遅い帰りだな。」
「…申し訳ありません。」
セナムの言葉に、謝罪をするライズ。
「いや、お前にしては珍しいと思っただけだ。」
そう言って、紅茶を飲むと笑う。
「そうですか。」
ライズは、紅茶を飲みながら今後の方針を考える。
「教会から、書類の取り消しの申請があった。」
セナムは、ライズを見て優しく微笑み言う。
「そうなんですか?」
「問題が、解決しそうらしい。」
さて、口止めはしたけど申請のタイミング…。これは、バレてるな。まあ、素知らぬ振りしとこう。
「そうなんですね。」
「まったく、困った奴だな…。」
セナム殿下は、苦笑してライズを見る。ライズは、無言で帰る準備をしている。挨拶して、帰った。
という事で、福猫商会でお菓子もぐもぐ。
え、担当の仕事?勿論、即行で終わらせたよ。だから、お菓子を食べるんです。とっても、美味しい!
「それは、バタバタだったな。」
「これで、少しは死亡率が減れば良いのだけど。」
アキトの言葉に、ライズは心配そうな雰囲気。
「それにしても、本当に自爆の道を進むよな。」
「別に、良いんだよ。いつか、適役そうな誰かに押し付けるんだから。取り敢えず、木々を薙ぎ払わないと道も出来ないでしょ?面倒で、お金がかかる事は手助けした。後は、人の心しだいだよね。」
ライズが呟くと、全員が頷いた。
馬車に乗り、家に帰る。すると、手紙を渡された。
ウィルの誕生日パーティー、その招待状である。無言で、その手紙を机の引き出しに入れる。
「ライズ様は、誕生日パーティーの準備は…」
「やらないよ。」
遮る様に、ライズは言う。
「しかし、普通は主であるセナム第二殿下を招待して祝うのでは?その、本当にしないのですか?」
困惑した、雰囲気の3人。ライズは、ため息。
「何か言われたら、考えとく。」
そう、呟いて読書するのだった。
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