とある日の1日

早朝4時、起床してストレッチをして体を起こす。そして、御使の仮面をつけて帯刀。4時半に、家を出て国を守る結界の確認。その周囲に、存在する魔物の退治と浄化作業を6時迄に終わらせる。


1時間半しか、時間がないので急ぐ必要がある。


帰りに、仮面を外し教会でお祈りする。まだ、誰も起きていないのかとても静か。神様から、お疲れ様の言葉を貰い、ノイズが来るので急いで家に帰る。


そして、ベッドに入り目を閉じて10分。


早起きしたので、うとうと眠気が襲う。しかし、ドアが開きノイズが窓を開けて換気する。


「ライズ様、起きてください。」


紅茶の準備をしながら、優しい声音で言うノイズ。


「……わざわざ、早朝に来なくても良いんだよ?」


眠そうに、小さく欠伸をして困惑した様に言う。そして、ゆっくり起き上がってベッドに座る。


寧ろ、来ないで欲しいです。バタバタするから。


「ライズ様に、仕える事こそが私の喜びです。」


すると、そう言って紅茶を渡す。そして、朝食の準備をし始めるのだった。すると、モルが入って来るのである。少し前から、訪ねているのだがモルは料理が苦手であった。だから、ノイズ1人で来ていたのだが…。少しだけ、問題があったのである。


料理してる間に、ライズが着替えを済ませる事だ。


食材を取り出しながら、紅茶を飲もうとしているライズに思わず視線を向ける。モルは、衣装棚から学生服を取り出している。ライズは、眠そうである。


「…美味しい。」


思わずそう言って、口もとを緩ませるライズ。


紅茶、美味しい…。いったい、何処の茶葉なんだろう?うーん、公爵家の領地では無いはずだけど。


フリーズして、思わずガン見しているモルさん。分かる、分かるぞモルさん。とても、とても可愛い過ぎる!この時は、年相応な微笑みを浮かべるのだ!


しかし、微笑みを浮かべるのはこの一瞬だけ。


寝ぼけて、無防備だからこそ見れる素晴らしい表情なのである。紅茶を飲めば、目は覚めてしまう。


残念だが、あの無表情に戻ってしまうのだ。


「あの、自分で着替えられる。」


特に、女性だしね。その、恥ずかしいんだ。


「なりません、公爵家の者として貴族としての扱われ方をしっかり学びませんと。困りますよ。」


この時は、日頃は大人しいライズ様も抵抗する。


「僕にだって、恥ずかしいという感情はある。」


ええいっ、言ってしまえー!


「では、次からシルバに頼みましょうか?」


モルは、落ち着いた雰囲気で言う。


「1人で、出来る。今までだって、そうしてた。」


出来れば、構わないで欲しい!嫌過ぎる!


そう、そうなのだ。この方は、常に孤独だった。なので、他人に対しての警戒心が異常に高いのだ。そして、1人で何でもこなす為に誰も要らないのだ。


「駄目です。さあ、着替えますよ。シルバ様。」


「うんうん、聞こえてたよ。じゃあ、モル様。」


モルは、頷くと外に出て行ってしまった。


「異性だと、余計に恥ずかしくなるよね。お兄さん分かる。さて、我慢して着替えようか。」


落ち着かせる様に、そう言うと少しだけ困った表情をして学生服を手に取る。ライズは、無表情だ。


「…分かった。」


何かの言葉を、呑み込んだ言葉だと2人は思った。


もう、何言ってもやるんでしょ?家を継がない、無能な僕なんて今まで通り放っておけば良いのに。公爵家に、仕える人間は誰も信用が出来ない。


早く、公爵家と縁を切ってしまいたい。


無言で、されるがまま。無言で、ご飯を食べているライズ様。その瞳に、黒い感情を見て固まる。


「ライズ様、馬車の用意が出来ました。」


「うん、ありがとう。」


ライズ様は、頷いて言う。ちゃんと、何かしてくれたら感謝はするし、とても礼儀正しい子である。


馬車か…。有り難いけど、今まで歩いて通ってた。けれど、わざわざ離れた屋敷に行って持って来たなら、邪険には出来ない。それ程、離れているから。


学園生活。誰も、僕に話しかけないし平和だ。ウィルが登校すると人がそちらに集まる。


授業が終わると、ノイズが馬車を用意してくれる。


王宮の第二殿下、その仕事場でお掃除やお茶の準備をして適当に時間稼ぎをする…予定だったのだが。


「ライズ、お前は計算は得意だろうか?」


「はい?」


思わず、困惑した声が出てしまうライズ。


まあ、得意ではないけどそれなりに?というか、今まで無関心だったのに何考えているんだろう?


「実技試験では、そこまでの成績では無いが。筆記試験は、学年トップの成績だと知ったのでな。」


ああ…、そういえばこの間の試験結果。もう、張り出されていたんだっけ。興味無いし、すっかり忘れてたなぁ…。そっか、筆記はトップだったんだ。


なるほどね、使えると思ったのか。


「取り敢えず、この計算をお願いしたい。」


確かに、今までこの逸材を放置したのはまずい。あの試験、高等部の問題が2つ悪戯で書かれてたそうだ。それを、間違える事なく全て解いたライズ。


はっきり言って、優秀過ぎる!


「どう言う、風の吹き回しでしょうか?」


そう言いつつ、紙に何か書き込んでいる。


「私は、お前を部下にしたい。だが、いささかお前を放置し過ぎた。本心から、後悔をしているんだ。だから、信頼関係を作る為に仕事をだな…」


どうか、私の誠意を受け取ってくれないか…


「終わりました。今日は、時間なので帰ります。」


面倒そう、さっさと帰ってしまおう。


そう言って、書類を渡して帰ってしまった。


「全て、計算があってる。いや、計算速度が速過ぎるだろ!しかも、会話する余裕もあるとか…。」


セナムは、苦笑してしまうのだった。



ライズは、歩いて福猫商店へ。明日は、休みだ。ノイズには、馬車は要らないと言ってある。商会の馬車で、帰宅する。夕食も、要らないと言ってある。


それと、プライベートに踏み込まれたくないとも。


なので、ノイズ達は今日はこっちには来ない。命令では無く、真面目にお願いした。渋々と、了承を得ることに成功。これで、気兼ね無く楽しめる。


一応、結界を張ったので来たら分かる。


馬車から降りて、アキト達と歩き出す。やっぱり、楽しいんだよね。このメンバーと、会話するのは。


窓から、お父様が見てるけど話は通してある。


家に入ると、誰もいない。取り敢えず、大丈夫か。さてと、試食会スタート!とっても、美味しそう!


「これ、旨いな!」


アキトは、唐揚げもどきを食べて言う。


「本当だ、肉汁が凄いね。美味しい。」


嬉しそうに、笑顔で飲み込んでから言うライズ。


他3人も、コメントを言う。


あと、2、3品という所で結界に引っかかる。ライズは、無言でドアを開けるとウィルが立っている。


「ご、ごめんね。まさか、お客さんが来てたなんて思わなくて。その、今日はもう帰るよ。またね!」


かなり、動揺した雰囲気である。


これは、聞かれてたか。まずいな、マナーの先生にバレたらまた怒られてしまう。まあ、なる様になるかな。せっかく、楽しかったのになぁ…。



ウィルは、急いで屋敷に向かう。


ライズ、あんな風に笑えたんだ。あんな風に、優しい会話が出来るんだ。あんな無邪気に…


悔しい、家族にも見せない素を簡単に見せて。


どうして、その笑顔を家族に向けてくれないの!どうして、いつも無言で余り会話してくれないの!


やっぱり、ライズは僕の事が嫌いなんだ。


「お帰り、ウィル。何故、お客さんが来てると言ったのに、ライズの家に行ったのかな?」


真剣な雰囲気で、少しだけ怒った雰囲気である。


「お父様、メイドや執事がライズが危ないって。」


ウィルは、思わずオロオロしながら言う。


「ウィル、君は執事やメイドを信じすぎだ。」


「だって、彼らは僕の味方だから…。」


すると、ダイナスは深いため息。


「私は、本音を言えばライズに家を継いで欲しいと思っている。ウィルは、精神面が弱過ぎる。けれどね、周りはウィル…君に継いで欲しいらしい。」


「なら何故、ライズを自由にさせているんです。」


ウィルも、精神面が弱い自覚はある。


「屋敷に、敵が多いからだよ。まずは、あれを片付けてからかな。自由にしたいけど、うちに必要なのは武力じゃなく知力だよ。武力は、有り余るし。」


ウィルは、思わず納得するのだった。



あの後、暫くして解散となった。ライズは、風呂に入り勉強を終わらせる。そして、読書して寝た。

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