黒髪の双子
さて、現在の僕は5歳になった。屋敷の敷地内にある、小さな小屋で1人で暮らしている。
これには、実は理由がある。
1歳になり、ステータスを更新しようと向かったのだが。意識のはっきりしない僕は、大泣きしてしまい神殿や教会の人達に神の前で泣くとは!っと激怒されてステータスを更新して貰えなかった。
家のメイドや執事からも冷たくされ、居心地が悪くなって此処に居る。まあでも、そのおかげで例の貴族がピンポイントに僕だけに攻撃する様になった。
だから、無能な振りをして過ごしている。
平民に落ちて、家を出れば最小限のダメージで事は終わるし。僕も、自由になれてゆっくりできる。
取り敢えず、魔物狩りして土地の浄化に行こうか。
御使の仮面を着けると、服装が御使衣装になる。和風ながらも落ち着いたデザインの装備である。
御使の仮面は、使用者が現在のところ更新できるステータス最上限の状態にする。外せば、ステータスは戻るので大丈夫である。じゃないと、僕が魔物相手に戦えるはずがないのだから。そういう事だ。
流石に、1人では辛い…。
『今日も、お疲れ様。君も、そろそろ学園に通う様になるでしょう?だから、御使を増やしたんだ。勿論だけど、君が一番偉い立場の御使だからね。だから、踏み外す御使からその資格を剥奪できる。』
優しく笑ってから、真剣に話し出す。
『増援については、感謝します。一番偉いとか、そういうのは要らないとは思いましたけど。その権利を、僕に渡すって事は国が取り込み始めました?』
面倒そうに、深いため息を吐き出す。
『察しが良くて助かるね。そういう事…。』
異世界神ライフは、真剣に頷いている。
「厄介な…。」
刀を机に置き、仮面を外して椅子に座る。
『君には、本当に助けられてるよ。ありがとう。もう少ししたら、解放したいと思ってるんだ。』
そういうと、気配が消えてしまった。シャワー浴びて、着替えて出ると食べ物が置かれている。毒は入ってない様だ。美味しく食べようかな。使用人が、持って来たみたいだ。僕も、雇うべきかな?
まあ、今は良いや。要らないもの。
そう言えば、弟が1人増えた。けど、洗脳が激しいみたいで僕の事を馬鹿にしている。まあ、馬鹿にされても可愛い弟である事には変わりないけどね。
さて、剣術や勉強もサボってしまってる現実。
「ライズ、何でまたサボるのさ!」
「こんばんは、ウィル。」
やはり、来たね。僕達は双子で顔もそっくりだ。僕が、無能で弱いのとは真逆に才能を開花させて、年齢を問わず好かれている。しかも、しっかりステータスを更新している。僕はまだ、1度もしてない。
「こんばんはじゃないよ!」
こうして、毎回わざわざ離れた此処まで来て説教をしてくれる。良かった、今日も元気そうで。
「毎回思うけど、何でそんなにサボるの?」
「んー?だって、ステータス的に危ないもの。」
すると、考える雰囲気である。
「なら、ステータス更新しに行こう!」
「ウィル、無理なんだ。既に、何度も断られた。」
すると、ウィルは国外にと言う。しかし、目立った動きは敵を作る。だから、話題を逸らす事にする。
「ウィル、もう遅いから帰って。護衛さん達も、待っているんでしょう?迷惑かけちゃ駄目だよ。」
ウィルは、時計を確認して慌てて帰って行った。
「さて、忙し過ぎて貴族だという事を忘れそう。」
取り敢えず、勉強はしてるんだよね。取り敢えず、夜の見回りしてから少し勉強して寝ようかな。
見回りしていると、襲われている子供。
「ありがとな、助かった。」
「もう、遅いから街まで送るよ。」
そう言って、街まで護衛をして帰る。かなり、遅い時間になってしまった。早く寝なければ…。
後一年と数ヶ月で、学園の初等部に入る事になる。
現在、僕の悪い噂が貴族社会では広まっている。勿論だけど、その殆どが嘘で悪意のあるものばかり。そのせいで、自然と笑う事を忘れつつある。
ベッドに横になり、深いため息を吐き出す。
「何で僕は、この国の人を守ってるんだろ?」
『……。』
主神ライフが、視線を向けている気配を感じる。
「分からなくなってしまう…。」
『ライズ、君は自分の大切な人を守る為だと言ってたよ。でも、無茶は良くない。無茶するくらいならば、私は君に休んで欲しい。心の癒しは、必要だと思うんだ。たまには、遊んでみてはどうかな?』
とても優しく、暖かい声音で話しかけられる。
「そうだね。」
そう呟くと、すやすやとライズは寝てしまった。
僕には、双子の兄がいる。いつも、無表情で無言だけど。いつも、側に居て何を考えてるかわからない人だ。いつも、側にいる癖に剣の練習には来ない。
お茶に誘っても、返事が来た事は一度もない。
その癖に、べったりといつも一緒にいるのだ。会話なんて、殆どないし周りも距離を取るからやめて欲しいんだ。本人に、言ってみたけどダメだった。
けど、7歳を迎えた日から。ライズは、僕の隣に居なくなってしまった。いきなりだった…。
き、嫌われたのかな?
でも、ずっと隣に居ても迷惑だし。
けど、もうずっと会ってない。家に行っても、居ないし待ってても僕がいる間には帰って来ない。
「諦めた。もう、待つのはやめよう。」
僕は、口ではそう言ったけど泣きそうになった。
分かってる、自業自得だって。僕が嫌だと言ったから離れたんだ。けど、一切関わりが無くなるなんて思わなかった。家が同じなら、まだ会話のしようもあるのに。そんな時に、知ってしまった。
僕には、脱魔力剥離という病気を持っていた。
この病気は、今の医療ではどうにも出来ない不治の病だった。体の内側から、魔力が逃げて外側の魔力さえも剥がれて霧散する難病だ。けど、幸運な事に僕達は双子だった。ライズが、側にいる事でこの病気の症状を抑える事が出来たのだ。似た魔力で、血縁関係にあるライズが側にいる事で起こる奇跡。霧散した魔力が、遠くに消える事なく、そのまま僕に戻って来ていたから。だから、僕は死ななかった。
けど、7歳になって体が安定したのか、この不治の病が完治してしまった。だから、ライズは…
僕から、離れてしまった。
ごめんなさい、守ってくれてたのに…。ごめん…。
でも、この感情はライズには届かない。どうして良いか、分からない。この苦しみは、きっと罰なんだろう。いつか、謝れたら感謝を言えたらいいな。
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