神の御使様は今日も忙しいようです

@Kurohyougau

転生ですか…

高卒で働いて、1年が過ぎようかという所から地獄が始まった。理不尽な事は、当たり前で無茶難題は日常茶飯事…。仕事で出向けば、罵詈雑言…。帰って来れば、山積みの仕事とサービス残業。勿論、出向く際の移動費は自己負担だし給料も少ない。


だから、こうなるのも仕方ないと思っていた。


「やあ、君が御使君だね。」


白金の髪に、黄金の瞳の美青年…。ふむ、死んだのか。まあ、あんな生活してたらそうなるよね。


「初めまして、異世界の主神ライフだよ。君達の世界の神々に頼まれて、君を僕の世界に転生させる事にしたんだ。勿論、私は君を歓迎するからね。」


穏やかな表情で、安心させる様に笑いかける。一瞬だけ、働き始めの優しい先輩達の表情が過ぎる。あの時は、先輩の後ろに立ってるだけで良かったな。でも、本格的に仕事しだしたらライバルだから。嫌な事を、思い出してしまった。苦しいけど、深呼吸をして落ち着く。もう、死んだんだし関係ない。


「転生ですか…。けど、死因は過労死ですよね。」


「違うよ。君の人生は、厄病神と祟り神の悪戯で滅茶苦茶にされただけ。けど、君の世界では直ぐに生き返らせる事が出来ない。順番待ちの新しい命が、生まれてしまったからね。それで、僕に助けを求めて来たって訳。という訳で、何か望みはある?」


優しく、僕を心配してくれる神様。けど、僕は別にチートとか要らないしなぁ。学生時代、異世界ファンタジーや転生物が好きで好んで読んでいた。


だからこそ、分かる。チートなんて、爆弾でしかないって事を。持ってても、利用されるか不自由になるだけ。要らない、要らない。貴族なんかも、複雑な事情があるみたいだし。ハーレムとかも、面倒だし地道に平民で働いてのんびり暮らせれば良い。


それも、自力で達成するから助けなくて良い。


「何も要りません。」


呟くように言うと、無言で固まる神様。


「はい?ちょ、ちょっと待って…正気?」


かなり、戸惑う雰囲気で僕を見る神様。どうやら、心を見られている訳ではないらしい。良かった。


「それは、困ったなぁ…。えっと、そんなに若いならファンタジー系のチートとか興味ありそうなものだけど…うん、興味なさそうだね。どうしよう。」


うん、興味ない…。えっと、問題があるのかな?


「どうしよう…とは?」


取り敢えず、聞いてみようかな。


「君の魂を受け取った時、あちら側の神々から君が何不自由なく暮らせる様にしてくれと言われてね。その為なら、いくらでも報酬を渡すと言われてしまって。それ程、神々は君に申し訳なく思ってるって訳。これで、僕が何もしませんでしたぁー。は完全にアウトなんだよね。僕も、気持ちは分かるし。」


困った表情で、優しく微笑む異世界神ライフ。


「なら、可能な限り異世界で困ったら助けてください。それだけで、これからの不安が消えるので。」


「そう、わかった。」


そう言うと、床が光る。


「取り敢えず、勝手にいろいろ放り込む事にした。だって、君は無欲過ぎるんだもん。僕の世界では、無欲な奴ほど強くなっちゃうの。だから、君の力を弱める為だからね?まあ、それでもぶっちゃけた話だけど…転生者ボーナスが付くし強いんだけど。」


手を振り、行ってらっしゃいと微笑む異世界神ライフ。僕は、思わず抗議するが声が出せない。


しかし、伝わったのか申し訳ないと謝罪された。




おはようございます、ベッドの上から失礼。


僕は、オルタニア王国のロイナ公爵家の三男として生まれ変わった様です。隣には、双子の弟がぐっすり寝てる。りんごほっぺ、もちもちしてそう。


まだ、意識が消えたりして安定しない。


この世界では、ステータスがある。1年に1度、教会か神殿でステータスを更新する事で強くなる。


「あら、ライズ起きてたのね。」


ちなみに、僕達の母親は僕達を産んで死んだ。聖職者として、無理して働いて体を壊していて、僕達を産むのに体が耐えきれなかったそうだ。それでも、死ぬ最後の日まで大切そうに僕達を抱きしめていたらしい。本当に、穏やかな最後だったらしい。


僕は、ライズ•ロイナ。


どうやら、今回の人生もとても大変そうです。


『ごめん、本当にごめんなさい。』


異世界の神ライフは、苦笑しながら言う。


『まあ、産まれたからには頑張ってみます。』


やれやれ、なんで勇者の血筋に生まれるかな。祖先が、初代勇者で聖女と姫の2人と結婚している。そして、この家は黒髪しか後を継げない。


この家で黒髪なのは、父親と僕ら双子だけだ。


更に言えば、兄2人の母親は王家の人間だ。まったくもって、問題だらけである。王族が強く言えない貴族が、ロイナ公爵家を妬んで攻撃してるし。


『ちょっと、恨んでも良いですよね?』


思わず、声が低くなったのは仕方ない。


『まさか、目を離してる間にこんな事になってるとは思わなかったんだ。こうなれば、開き直って僕の為に働かない?僕も、全力で守るから。』


ライズは、思わず深いためを内心で溢す。


『まあ、できる範囲でなら働きます。』


『取り敢えず、この状況をどうにかして。』


異世界神ライフは、頭が痛そうに頼むのだった。


『ですよね。仕方ない、弟を守るためです。』


『じゃあ、初代神の御使に任命しよう。って、そんな顔しないでよ。大丈夫、いろいろ考えてる。』


という訳で、異世界に転生して神の御使に選ばれました。ふざけんな!って、本音は置いておいて。本気でなんとかしないと、僕だけでなく家族も殺されてしまう。それに、この可愛い弟を守らないと。


取り敢えず、警戒しながら成長するしかないよね。


ライズは、隣の双子の弟を見つめて決意した。

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