第159話 告白、そして――。

 俺からの告白を受けて、涙を流す梨々花――。


「……いいの?」


 そして確かめるように、梨々花はそう確認してくる。

 その言葉に俺は、梨々花を真っすぐ見つめながら「もちろん」と頷く。


 すると梨々花は、我慢していたものを解き放つように抱きついてくる。

 繋がりを確かめ合うように、ぎゅっと抱きしめられる。

 そんな梨々花のことを、俺も両手で包み込むように優しく受け止める。


「わたしも、彰が好き。大好きだよ」

「うん、ありがとう」

「付き合うってことで、いいんだよね?」

「そうだね」

「Vtuber同士でも?」

「何とかなるさ」

「大学も同じだよ?」

「あはは、みんな知ったら驚くだろうね」


 梨々花の確認に、俺は一つ一つ答える。

 そうして一つずつ不安が解消されていくことで、梨々花も徐々に実感してくれたのだろう。

 質問が止むと、小さく鼻をすする音だけが聞こえてくる。


「……じゃあ、いいんだよね?」

「もちろん、梨々花がいいなら」


 俺の言葉に、梨々花は抱きつく手を解き俺の両肩へ手を置く。


「良いに決まってるじゃん……」


 そして、顔と顔が今にも触れ合いそうな距離で、梨々花は小さくそう呟いた。

 その言葉は、紛れもなく梨々花からのオッケーの返事。

 つまりは、これで晴れて俺達は彼氏彼女の関係となれたことを意味していた。


 俺達は見つめ合いながら、何だか急におかしくなってきてお互いに吹き出すように笑い合う。

 何がおかしいのかはよく分からないけれど、これはきっと喜びからくる笑みなのだと思う。


「でも付き合うって、何がどう変わるんだろうね」

「そ、そうだね」


 これまで誰とも付き合ったことのない俺の言葉に、梨々花は照れるように目を逸らしながら同意する。

 梨々花ならきっと経験もあるだろうと思っていただけに、その初心な反応はちょっと意外だった。


「ま、まぁ、まずはあれじゃないかなぁ~」

「あれ?」

「キ、キキキ、キスとかぁ?」


 相変わらず目を逸らしながら、顔をリンゴのように真っ赤にする梨々花。

 その分かりやすすぎる反応が可愛くて、経験のない俺の方が逆に冷静でいられた。


「そっか――じゃあ、こっち向いて」

「ふぇ?」


 優しく語りかける俺の言葉に、梨々花は驚きつつも言われるままこちらを向く。

 そんな梨々花を優しく抱き寄せると、梨々花の唇へそっと自分の唇を重ねる。


 正真正銘、これが俺の人生初めてのキス――。


 上手くできているかなんて分からない。

 それでも、今はこの繋がりがただただ愛おしい――。


 どれぐらい時間が経っただろうか。

 お互い求め合うように、たっぷりな時間をかけてキスを交わした俺達は、再び鼻と鼻が触れ合いそうになる距離で見つめ合う。


 照れくささや、愛おしさ。

 様々な感情で胸がいっぱいになりながら、二人一緒にクスリと笑い合う。


「しちゃったね」

「そうだね」

「もう、あとには引けないよ?」

「もちろん、これからは前に進むだけだよ」

「ふふ、そうだね。――まぁ、仮に彰がわたしから引こうとしても、絶対に逃さないんだけどねっ!」


 悪戯な笑みを浮かべながら、梨々花は再び俺の唇へ軽くキスをする。

 そして繋がりを喜ぶように、今度は力いっぱいぎゅっと抱きついてくるのであった。


 こうして俺は、無事に梨々花と彼氏彼女の関係となることができた。

 これから先、どうなるかなんて正直分からない。

 でも俺は、この愛おしい梨々花のことだけは、何があっても大切にしようと心に誓うのであった。

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