第59話 満喫

「桐生くん、今日は誘ってくれてありがとね」


 岩盤浴を終え、そのままそれぞれ別れて温泉も満喫した俺達は、身も心もスッキリした状態で施設内にあるご飯屋さんで一緒に晩御飯を食べている。

 すっかりこの施設を満喫してくれている藍沢さんは、感謝の言葉とともにリラックスした表情で微笑んでくれている。


「そんな。楽しんで貰えてるなら誘ってよかった」

「うん、正直ハマっちゃいそうかも!」


 嬉しそうに、ニッと微笑む藍沢さん。

 既にハマっている俺としても、こうして岩盤浴仲間が増えるのは嬉しいことだ。


「だから桐生くん、また一緒に来ようね?」


 しかし、その満面の笑みとともに告げられたその言葉に、俺はちょっと困惑するとともに顔が熱くなっていくのを感じる。


 やっぱり、こうして身近にいても藍沢さんは藍沢さんなのだ。

 誰が見ても美人だと評するような女の子に、直接そんなことを言われるというのは普通に照れ臭くなってきてしまう――。


 でも、誘ったのは俺だし嬉しいのも事実。

 だから俺は「もちろん」と返事をすることで、俺達の関係に岩盤浴仲間という関係性も追加されるのであった。


 こうして一緒に晩御飯も済ませた俺達は、しっかりと満喫して帰宅するのであった。


 帰る際も、藍沢さんはすっかり満足しきった様子でルンルンと微笑んでおり、ちゃんと良い息抜きになったかなと思えることが、俺としても嬉しいのであった。


 色々大変だと思うけど、がんばれ藍沢さん――。



 ◇



 週末がやってきた。

 なんだか一週間が、日に日に早くなっていっている気がするけれど、それも日々が充実しているおかげだろうと思いながら、今日は朝から出掛ける支度をしている。


 理由は、今日はFIVE ELEMENTSのみんなとステージで踊る振り付けのリハーサルを行う日だからだ。

 普段あまり身体を動かすことのない俺だけれど、ここ最近は家でストレッチぐらいはしておこうと、やれる範疇で一応身体を動かしてはいる。

 たとえ一曲でも、歌って踊るというのは簡単なことではないのだ。

 ましてや、初めて出来る後輩の記念すべきステージで、先輩がミスをするわけにもいかない。

 そんなプレッシャーを感じているからこそ、今日のリハーサルの重要さはしっかり理解したうえで、俺は気合いを入れつつ集合場所のレッスンスタジオへと向かうのであった。


「あ、きたきた! アーサーこっちー!」


 スタジオへ到着すると、先に来ていたアユムが声をかけてくれた。

 見ればそこには、アユムとハヤトの姿があり、二人はストレッチをしながら他のメンバーが来るのを待ってくれていたようだ。


「おはようアユム、ハヤト」

「うん、おはよう」

「おはようアーサー!」


 前のオフコラボぶりに会うメンバーの姿。

 あの時はお酒の影響もあってか、メンバー同士腹を割って語り合ったこともあって、何だかちょっと照れくささも感じてしまう。

 特にアユムは恥ずかしがっているのか、いざ俺を前にすると少し頬を赤らめながら目を逸らしているのであった。


「あー、みんなおはよー」


 そして俺に少し遅れて、ネクロもやってきた。

 ネクロだけは何も変わらず、今日も持ち前のマイペースっぷりである。

 まだちょっと眠たそうな目をしながら、少しフラフラとした様子でこちらへ近付いてくる。


 ――おいおい、大丈夫かよ。


 そんな様子に少し心配になるも、思えばこれまでもこれが平常運転のため、あまり気にしないでおくことにした。


 そして残すはカノンのみ。

 いつもは真っ先にやってくるタイプのため、一番最後なんて珍しいなと思っていると、少し間を空けてカノンもやってきた。


「お、おはようみんな!」


 今日もいつもどおり、可愛いというより綺麗系のカノン。

 たとえレッスン用の服でもちゃんとお洒落をしており、もし街ですれ違えば思わず振り向いてしまいそうなルックスをしている。

 でも今日のカノンは、どこかちょっと挙動不審に感じられた。


 何故なら俺を見るなり、自分の髪を指でいじりながら少し引きつった笑みを浮かべているからだ。

 そんな顔をされる覚えのない俺は、その謎の反応に内心では困惑しつつも、ここは気にしていないフリを貫くことにした。


「お、おはようアーサー!」

「あ、ああ、うん。おはようカノン」


 な、なんなんだよ……。

 俺に引いているのかなと思いきや、向こうから真っ先に挨拶をしてくる。


 ――まぁあれか、カノンも前のオフコラボのことを気にしているのかもな。


 アユムが少しぎこちないのと同じで、カノンも気にしてしまっているのだろう。

 そう思うと、こんな美人達がぎこちなくなってしまっているギャップが、ちょっとだけ面白く思えてくるのであった。


 お酒の力、恐るべし――。


 こうしてメンバーが揃ったことで、早速ダンスレッスンが開始される。

 ステージで歌う曲はもう決まっているため、あとは後輩の初ステージにしっかりと華を添えられるように、メンバー五人での振り付けをお互いに確認し合うのであった。



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 <あとがき>

 岩盤浴でリラックス。

 そして、いよいよ迫ってきたDEVIL's LIPのデビューステージ。

 一体どうなる!?


 ということで――、

 おかげさまで本日、ラブコメ日間ランキング4位と高順位にランクインすることができました!

 いつもありがとうございます!

 また、前回は星が1000到達報告しましたが、フォロー数も自己最多を更新することができております!

 本当に沢山のフォローありがとうございます!!


 引き続き楽しんでいただけるように頑張りますので、改めてよろしくお願いいたします!!

 とっても励みになっております(*^▽^*)

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