第27話 孫

この町の全てが見下ろせる程の場所にある家には朝日がしっかりと照らされていた。


僕はあくびをして起き上がった。


「おはよ。」


「おはよう。」


「元太は最後だな。」


「そうだね。」


驚くほど清々しい朝を迎えた。


この状況でなければ最高の気分だったろうに。


「おはようございます皆様。朝食を持ってまいりました。布団を片付けさせていただいても宜しいでしょうか?」


「あー……あいつどうする?」


「ほっとくのが良いんだろうけど、起こすか。」


玲音君が元太君の敷布団を思いっきり上に引っ張って乱雑に元太君を起こした。


「うっ……おはよう……てかてめぇ何すんだよ!すやすやと眠ってたのによ!」


「ごめんごめん。それよりご飯来たよ。」


「え!?ご飯!?」


「行くよ。」


「おう!!」


玲音君は先にこちらに来てしまった元太君を無視して元太君の寝ていた布団を畳んで 布団がまとめられているところに置いた。


「ありがと。」


「いえいえ、こちらこそありがとうございます。こんな朝食まで用意していただいて。」


「いえいえ、それじゃあ楽しんで。」


「はい、ありがとうございます。」


玲音君が自分の朝食の前で座ったのを確認すると健一さんがいただきますの挨拶をして僕たちもそれに続いて挨拶した。


暖かい朝食を食べ終えて、健一さんは早々に出て行った。


「ちょっと、どこ行くの?」


「重大な野暮用。」


「え?」


「そんじゃ行ってくる。園城寺さんよろしくお願いしますねー。」


「わかりました。」


彼はそう言って山を下りて行った。


僕たちは彼を見送った後部屋に戻った。


そこで三人から話があるといわれ座った。


「祭り以降私たちは貴方方をここには置いておけないといいました。なので専属の刀職人にお願いして全員分の刀を作ってもらいました。主人様との戦闘時に貴方達の戦いぶりを計測させていただきました。」


「どうやって……。」


「部屋の四隅に設置されている超小型センサーを使って計測致しました。こちらは異変が起こってから設置したものです。」


「そんなものをどうやって仕入れたんですか?ほかの町からもこの町からも出られるルートはありませんよね。」


「私、天才なんです。」


「作ったっていうんですか。」


「じゃないと今頃主人様に雇われておりませんので。」


「どうして小型センサーを?」


「主人様は楽しんで殺したいという思いも秘めておられますが、苦しまずに死なせたいという思いの方が強くあります。ですので、相手様の戦い方を計測し、一突きで殺せるような刀を開発しようと思いまして。主人様のご希望です。」


「それは凄い。後で教えていただけないですか?」


「残念ながらそちらは個人情報ですので。」


彼女は言いながら狐の仮面の口に人差し指を当てた。


「そうですか。それは残念です。」


この後も雑談をして過ごした。


「この家には三人だけで住んでるんですか?」


「四人かな。正確に言うと五人だけど。因みに刀職人さんね。彼この敷地内には住んでるから。」


「この敷地内にいたんですね。」


「いつもあそこで刀の勉強や製作をしているわ。だから客人が彼の姿を見ることは無いの。」


「で、あと一人は?」


「わしの孫じゃ。」


「孫!?」


「十五の孫がおっての。」


「十五!?それって……」


「子供じゃが殺さないように言ってあるから大丈夫じゃ。」


「いやそういう問題じゃ……」


「なぜお孫さんにはなんの殺意もわかないんですか?」


「そうじゃの……本能かの。蘭は殺しちゃいかん本能が言っておるんじゃよ。」


「じゃあほかの人は殺していいと。」


「違う違う。そういうわけじゃない。本能なんだ。止められないんだ。」


「本能?」


「気づいたら殺していたという感覚に近いのかもしれない。わしらの場合は殺してる時も意識はあるんじゃ。別に体が言うことを聞かんというわけでもない。……華聯はこの町にとって重要じゃからかのぉ……」


「重要?」


「すまんがそれ以上詳しくは言えんな。」


僕たちは異様な雰囲気の空間に包まれて一晩を過ごした。

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