第26話 豪華な祝福を。

健一さんが出ていった後僕らはいつ襲ってくるかも分からない三人に脅えていた。


「お前らそんなに怯えるでない。そんなに怯えんでも大丈夫じゃ。わしらは君らに負けたんじゃから殺さんわい。」


「……」


神様は一体僕らに何をさせたいんだ。なんの試練を与えたいんだ。


死ぬまで何も変わらない日常を過ごさせて欲しかった。ずっとそう思っていた。


「あ、もうすぐお昼の時間だな。お前ら昼食を作って来てくれないか。」


「かしこまりました。」


仮面の少女二人は台所へと向かった。


「お手伝いします……!!」


この状況の中で一番最初に声を出したのは美鈴ちゃんだった。


「おぉ、ありがとう。助かるよ。」


「あ、ちょっと待て!皆さん分の布団も買ってきてくれないか。えっと六人分だな。お金は後で渡すから。お願いするよ。」


「はい、かしこまりました。」


数分後、太陽の光に照らされて光り輝く料理が机いっぱいに広げられた。


――ガラガラガラガラ


タイミング良く健一さんが帰ってきた。


「うわっ!なんだこれ。すんげぇ美味そうじゃねぇか!!早く食べようぜ!」


この一週間ろくなものを食べていなかった僕らにはご馳走以上のものに見えた。


幻も疑ったがどうやらそのようでは無いようだ。


「いただきます。」


カチカチチャカチャカと食器の音が響き渡った。


今は礼儀などどこかに捨てられていしまっている。


僕らはボロボロの体で最高の祝福を受けた。


机の端まで埋めていた料理は全て空っぽになり、僕らは空いた皿を手分けして台所まで運んで戻った。


「ふー、お腹いっぱいだー。」


「そうじゃの、わしもお腹いっぱいじゃ。」


「そうだ、料理も用意してくれたってことは助けてくれるってことでいいんだよな?ですよね?」


「まぁそうだが……残念ながらずっと匿うわけには行かんのじゃ。匿えても祭りまで。」


「え?祭りまで?確かにずっといるのも失礼だと思いますが、何故祭りまで?」


「……蘭!神奈!えーっとちょっと……えーっと、デザートは無いのか?」


「デザートですか?買ってきましょうか。」


「あーそうだな!……いや良い。デザートほしい人いるか?」


彼の問いには困惑して誰も答えなかった。


「良い。」


「かしこまりました。では失礼……致します。」

「あぁ」


「……とにかく理由は言えんが無理なんじゃ。残念だが。」


「いえ大丈夫です。まだ僕の家もありますし。そんなに長く泊めてもらうつもりも端から無かったので。」


「そうか、それならいいんじゃが……。」


僕たちは沈黙に包まれながら夜まで自由に過ごし、そして寝た。


仮面の少女が買ってきてくれたふかふかの布団で寝転んでみたが、一回殺そうとしてきた男の家に泊まるのは気が気じゃなかった。

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