昼ご飯
「なんで……。」
「君たち居たの!?良かった無事で。それより栗田君?なんで先生に嘘ついたの?」
「……。」
彼女は怒っていた。
「嘘嘘!みんな大丈夫?」
笑顔で彼女は喋りかけているが、僕含め全員が先生の言葉など微塵も頭の中に入らなかった。
それよりも彼女の目の奥には狂気が隠れているようなそんな気がした。
「みんな?大丈夫?」
「近づかないで!」
普段声を荒げない美鈴ちゃんが声を荒げて言った。
彼女は恐怖に満たされていて今にも泣きだしてしまいそうだった。
加奈子ちゃんは少し驚いたようだがすぐ冷静にことを把握したのだろう。
元太君は口をポカーンと開けていた。元太君は強いが怖いことは恐らくこの中で一番苦手なので彼が一番驚いているのではないだろうか。
玲音君は呼吸があまりうまくできていないようだった。
「先生……やっぱり信用できないよ。」
僕はリュックの横に入れておいた包丁を取り出して、後ろで構えた。
「ごめん栗田くん。他の先生が職員室から出てきてて、栗田くんのところに行かれたら困るから着いて行ってたら、階段を上る栗田くんを見つけたからついてきちゃった……。ほんとごめんね。」
「……先生もうこんなことしないで。」
「うん、本当にごめんね。」
申し訳なさそうに謝る彼女を見て僕は少し気持ちが揺らいだ。
「……みんな、藤井先生は信用していいと思う。少しだけ。」
皆が無言で見つめてくる。
「ごめん。さっき駐車場で先生と会っちゃって……。でも凶器は持ってなかったし、襲ってもこなかった。だから少しは信用してもいいと思う。それに異変にもかかってないと思うんだ。だから先生を味方につけておけば安全に過ごせるかもしれない。」
「……僕は少しだけ信じるよ。でもまだみんなの信用を得たなんて思わないで。」
「うん、わかってる。ありがとう。」
「とりあえず保健室いこっか。ここは危険すぎるよ。ついてきて。」
そう言って先生は動き出した。
警戒しながらもそのあとを追っていき無事に保健室へと着いた。
そして先生はまた鍵をかけた。
「なんで鍵をかけるんですか!」
「あ、他の先生が入ってこないようにね。窓は開けておくから逃げたくなったらそこからでも逃げて。」
「……分かりました。」
先生は先程のように椅子に腰かけて足を組みながら窓の向こうを見ていた。
「で、なにか私に質問ある?」
「なぜ僕たちを助けてくれたんですか?」
「こんな状況の中で一人でも多くの子を助けたいから。因みに私は本当に異変にはかかってない。それだけ言っておく。それに異変の原因は何も知らない。さあ他に質問ある?」
「お腹すいた。」
あれからずっと口を開かなかった加奈子ちゃんが口を開いた。
「え?あ、そっか。異変が起きてから買い物に行くこともできないし、まともなもの何も食べれてないよね。先生が買ってくるよ。なんでもいい?」
「うん、ありがとう。」
先生は机の上に置かれた車の鍵らしきものを持ってドアに向かった。
「それじゃあ行ってくるからね。」
先生はドアを開けて保健室を出て行った。
加奈子ちゃんがこのタイミングでこんなことを言うとは信じられなかった。
なんというか静かな子だからお腹すいたっていうのをあのタイミングでいうとは思わなかった。
そんなことを思っていると加奈子ちゃんが立ち上がった。
「なにかないか探しましょ。」
「なるほど、賢いね。」
「え?」
僕にはなんで玲音君が加奈子ちゃんの事をほめているのかが分からなかった。
「先生がここにいなければ色々探し放題。先生を買い出しに行かせたのは先生を保健室から一時的に出して、その間に手がかりを探すため。」
「なるほど……。」
それは確かに賢い。
先生に断られたら終わりの一か八かの選択だったわけだ。
僕たちは先生の車がなくなったのを確認して部屋に何かないかを探し回った。
しかしいくら探しても何もなかった。
「何もないね……。」
「でも探さないよりかは良かった。」
「そうだね。」
僕たちはぐちゃぐちゃになったところを片付けて先生の帰りを待った。
――コンコン
「帰ったよ~。」
そう言って扉を開けてコンビニの袋の中から彼女が取り出したのはホクホクのじゃがいもとウィンナーのカレー味、湯気が立つスープはここから見ていても温かいのが伝わってくる。他にも飲み物を出してくれた。僕らはそれを何も疑わずに食べた。
「何も疑わずに食べてくれるの?」
「信用してきてますから。」
「そう、良かった。」
それをお腹いっぱい食べて先生と雑談をして寝た。
二日目も同じように昼ご飯を食べている時、急激な眠気に襲われてしまった。
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