自分がいる場所が定かではなかった為、お母さんから盗んできた携帯の中に入っている地図アプリを開いて現在地を確認した。


開いてすぐに分かったことは、ここから学校までは左程離れていないということだ。


学校がある第三区は住宅街が少ないので第三区に繋がる森にさえ入ってしまえば安全に行けると思う。


第二区の住宅街を少し進むと住宅街とはうって変わって広い森が続いている。


身を隠しながら道を進む。


道を進みながら思ったのだが昼にしては人が少なすぎる。


前はここら辺も散歩しているお婆さんやお爺さんがいた。


でも今は誰もいない。不気味な程に。


そのまま何事も無く住宅街を抜け、森へと入る事が出来た。


森と言っても学校に繋がる道があるためしっかりと整備されているし、安全面もしっかりとされていた。


道にそってそのまま小学校へと向かい、見つかること無く小学校に着いた。


しかし小学校の駐車場には先生の車が止まっていた。


第三区は学校しか建てられていないため交通面においてはあまり良くない。


だから車で行き来しないと大変なことになるはずだ。


なのに車が止まっているということは先生が学校にいるということなのだろう。


「どうしよう。先生がいるなら入れないよ。」


「外階段から中へ行けないかな。」


「中が閉まっちゃってるから無理じゃない?正面玄関からしか入る道はないと思うよ。」


「みんなで入るの?バレちゃわない?」


「誰か1人が中に入って2階に上がり、扉を開けることが出来ればそこから全員が入れる。」


「でもその1人はどうやって決めるの?」


「……。」


誰も行きたくないのだろう。沈黙が流れる。


しかしそのはずだ。


殺される可能性がある役を簡単に引き受ける訳にも行かない。


しかしこのまま過ごす訳にも行かない。


「さっきも行ったし僕行くよ。」


「そういうならしゅう、任せたよ。本当にありがとう。ただ危ない事は起こさないでくれ。」


「うん、分かってる。」


ひとまず皆で校舎の外階段近くまで行き、そこから僕だけで正面玄関へ向かった。


靴を片手に先生達が誰も廊下にいないことを確認し、2階へと上がった。


それにしてもなぜ車が置いてあったのだろう。


なぜ子供が居ない今、先生が学校に来ているのだろう。


そう不思議に思いながらも2階の外階段に繋がる扉まで辿り着き、鍵を開けた。


「ありがと。」


小声でお礼を言うと皆は屈んだ。僕も一緒に屈んだ。


「なんで屈むの?」


「さっき皆には話したんだけど、別校舎から先生が見てる可能性があるからね」


「なるほど。」


それだったら僕が立って移動していたのが見られている可能性があったということになる。まずい。


しかし、ちらっと別校舎の窓を見て見たが誰も居なかった。増してや人の気配すら無かった。


僕が現れた寸前に隠れられたとでも言うのだろうか。


何がともあれ学校内に入る事が出来た。


後は安全そうな場所を探すだけだ。


当然の事だが教室はどこも鍵が掛かっていた。


それでも一応確認しながら進むと唯一空いていた部屋があった。


僕らのクラスだ。


僕らは教室に入り急いで鍵を閉めた。


廊下側の窓の下に隠れ、何とか隠れ場所を見つけられた事に安堵していた。


僕は先生が本当にいるのか気になって自分だけ教室を出て外から職員室を見てくるよと言って教室を出ようとした。


「言ったよね。危険なことはするなって。」


「ごめん、でも本当にいるかなんて分からないじゃん。居なかったらひそひそする必要もないんだし。」


半ば強引に出ていって外階段から外へと行った。


姿が見つからないように静かに進んで行く。


その時僕は足音を派手に立ててしまった。


ザザッ――という音と共に目が合った。


「栗田くん?」


「先生……!」


まずい。

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