行動

頼みたい事があります。

毎日聞こえてくる鳥の声に今日も起こされた。


高木さんのアパートに止めてもらって二日目の朝。


僕たちは彼が眠った後、少しだけ観察していたのだが一向に起きる気配がないため、全員寝た。


「おはよう……みんな。早いな、起きるの。」


かすれた声で起きてきた彼はそのままトイレに行った。


「おはようございます。」


「お!おはよう。」


彼は僕たちが昨日よりも返事してくれるのが嬉しくなったのか少し表情が緩やかになっていた。


彼は朝からパソコンを開いて何かを調べている。


一体何を調べているんだろう。


気になったが信用はしてきたとはいえ、彼のパソコンを覗きに行く勇気などなかった。


「高木さん、何を調べているんですか?」


「え?あぁ何でもないよ。」


玲音君が彼に近づいて行った。


パソコンを見ている時だけ憑りつかれたかのように熱心な顔をするのに何も無いのは可笑しいだろう。


「嘘つかないでください。」


「本当に何もないって。」


「……そうですか。わかりました。諦めます。」


「え?」


玲音君は教えてくれない高木さんから離れて再度僕たちの方へと戻ってきた。


「こんなことやってても何も得られない……!」


「え?どうしたの玲音君。」


「この異変を終わらせよう。じゃないと一生このままです。」


「それで高木さんに頼みたいことがあります。」


「お、なんだ?」


絡まれてあからさまに嬉しくする高木さんを無視して玲音君は話を進めた。


玲音君は皆の方を向いた。


「その前にまずは手掛かりになりそうなものをなるべくたくさん集めようと思う。」


「どうやって探しに行くんだ?外は大人だらけで危険すぎるぞ」


「そう、ということで健一さんにお願いしたいんです。大人たちに聞き込み調査をしていただきたい。ばれない様にさりげなく今の話題に持って行ってください。きっと別の町からきて仲いい人が誰もいないなら聞き放題です。」


「皆たまに痛いところついてくるのは何なの……。でも分かった。たくさんの情報を集められるようにはする。」


「商店街の方々優先でお願いします。」


「なんでだ?」


「商店街には人も沢山いるし、その近くの交番にいる警察はこの町の安全を守る仕事をしてる、だから商店街が見えやすい位置に設置されているんです。つまり何か異常がなかったかを聞くことができるんです。とっくにこの状況が異常なのは置いといて……。」


「さすがだな、俺には思いつかなかった。」


「それほど馬鹿ってことなのね。やっぱり信用して大丈夫だったわ。」


「おま……馬鹿にしやがって、俺の方が年上なんだぞ?」


彼女はそれ以外何も発言せずに耳をこちらに傾けた。


彼は呆れた様子で同じように静かに耳を傾けた。


「それと僕達もどこかに探索しに行こうと思ってます。」


(それは聞いていない。)


「行くってどこに?」


「どこかに。」


「学校はどうだ?」


「学校?」


「そう、学校。子供のいない場所に大人が行くメリットなんかないやろ?」


「……確かにそうだね。学校の図書室にはこの町に関するものが一つや二つあるかもしれない。それに備蓄も持って帰れそうだし。」


「だろ!?」


「じゃあ僕たちは小学校へ行こうか。皆良い?」


皆は静かに、でも強く頷いた。


「じゃあ、そういうことで。健一さんは聞き込みをお願いします。僕らは健一さんが帰ってきたら行きます。それまで色々整理したいこともあるし、無闇に外に出るのは危険なので。」


「分かった。」


僕らは先に出る健一さんを見送った。

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