お腹空いた
「そうなんですか。ところでなぜ高木さんには異変が起きていないのでしょう。」
「それは俺にもわからない。」
「一体原因ってなんなんだ……。」
その言葉を最後に数分間の沈黙で部屋は包まれた。
「まっ、取り敢えずコンビニ行ってくるけどなんかいる?色々調べたいこともあるから早くには帰れないけど。」
「いえ特に。」
「でも何も食べてないだろ。」
「お腹すいた。サイダーとお菓子買ってきて。」
「はいよ。」
加奈子ちゃんは相変わらずだ。
「出て行くも出て行かぬも自由、好きにしろ。」
去り際に言って、高木さんは事前に用意していたであろう荷物をまとめて部屋を出て行った。
彼が部屋を出て行った後は加奈子ちゃんに対する尋問が始まった。
「なんで彼を信じたの?」
「……危ないっていう感じはしなかった。この町の人じゃない。だから異変にはかかってない。」
「じゃあほかの町から来たってことだよね?他の町は安全っていう事?」
「いや、安全なら救助が来てるはずだ。こんだけ子供がいたら僕たちみたいに生き延びている子が隣町に様子を見に行ってもおかしくない。あれから六日も経っているのに救助の一つも無いのはおかしい。」
「じゃあこの町を出る方法はないっていうこと?」
「今のところはそうなるね。」
彼の発言で僕は確信した。
助かることなく一生この町で暮らすことになると。
果たしてこの異変はいつまで続くのだろうか。
そして僕が十八歳になったら安全に暮らせるようになるのだろうか。
「なんとしてでも呪いの原因を突き止めないと。」
「そうだな。」
これからどうするかについて話し合っていると高木さんが帰ってきた。
「ただいま、はいこれ、サイダーとお菓子。」
そう言って袋から取り出したそれらを加奈子ちゃんに渡した。
僕たちにもジュースとお茶、お菓子とご飯を買ってきてくれたようだ。
未開封だから何かを仕込んでいるという心配もしなくていいだろう。
「ありがとうございます。いただきます。」
そう言ったはいいものの中々喉を通らない。
ジュースで一緒に流し込んでみる。
やっと通ったがこれ以上食べる気にはならなかった。
僕は少しだけ食べて残りは夜にでも食べることにした。
「えっと、まぁ好きにしてて。俺は調べたいことがある。」
そう言って彼はパソコンを取り出し部屋の端に座ってパソコンの画面とにらめっこした。
僕たちはこの暇な時間をどうしようかと頭の中で必死に考えた。話し合いはできない。
別に人見知りというわけではない。
ただ今の状況で近くに大人がいるとなると無暗に話すべきではないとみんなが判断したのかそこから彼が寝るまでは話すことはなかった。
沈黙とタイピング音が再び部屋を包み込んだ。
「おやすみ、みんな。……良い夢見ろよ。」
そう言って畳の上で先に彼は寝た。
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