少女

少女

午前六時半、太陽はいつものように町を照らしていた。


町と同じように太陽に照らしつけられて目が覚めた僕は昨日のうちにまとめておいた荷物をリュックの中に入れながら漏れがないかを確認する。


収穫があればもう戻ることのないであろう秘密基地に別れを告げ、まとめておいておいた荷物をすべて入れ、空っぽになった秘密基地を後にして梯子を降りた。


大通りは田舎ということもあって、通勤時間だから車通りが多いが、裏道には相変わらず誰もいないのではないかと言うほど静かだった。


なので安全に降りることができた。


そこから僕らは黒百合第二公園を目指すことにした。


第二公園は静かな裏道の方にあり、人通りも少ないので並木の裏などに隠れていれば見つかる心配は殆どない。


秘密基地を出発して1回大通りの方へ向かった。


幸いな事に店の準備をしているからか大人はほとんど居なかった。


道路の端にある草を通って第二区へむかった。


黒百合町は区に分かれていて僕たちが住んでいるのは第一区だ。


僕たちが今向かっているのが第二区、学校があるのが第三区だ。


草むらを抜けて少し大通りに出た。


通勤時間を超えたので車通りは先程よりも少ないがまだあったため警戒は出来なかった。


警戒しながら進んでいき無事に第二公園に到着した。


人通りが無かったのでベンチに腰掛けているといきなり少女が現れた。


少女はぼろぼろな服を着ていて今にも倒れそうなほどやつれていた。


驚きのあまり僕たちが動けずにいると、美鈴ちゃんが少女に歩み寄って行った。


「だ、大丈夫?」


「えっと、貴方名前は?なんて言うの?」


少女は喋る気が無いのか、それとも無視をしているのか口を閉ざしたままだった。


「ねぇ聞こえてる?」


「……加奈子。」


「え?」


「私の名前、加奈子。」


「そう、加奈子ちゃんっていうの。私は美鈴、よろしくね!」


「……」


再び口を閉ざしてしまった彼女に美鈴ちゃんは苦笑していた。


「取り敢えず人が来ないうちに荷物を置いておこうか」


玲音君はそう言って並木裏に皆の分の荷物を置きに行った。


その間、美鈴ちゃんは再び彼女に質問した。


「ねぇ加奈子ちゃんはどこに住んでるの?」


「……分からん。」


「え?分からない?」


「家が無い。」


「……そうなんだ……。」


再び僕らの周りは沈黙で包まれた。


僕はこの沈黙の中で一つ疑問に思ったことがある。


こんなにボロボロの服を着ている子は今まで見たことが無い。


そしてなぜいきなり現れたのか、なぜ今まで見たことが無かったのか、僕の頭の中は今にも破裂しそうだった。


でも、全く知らない子なのに信用できる気がする。それは子供だからだろうか。


僕はふと思った意見を皆に伝えた。


「この子も一緒に行けば仲間も増えるし、心強くなるんじゃないかな。」


「でも、敵か味方かも分からないんだよ?」


「でも子供。」


核心をついたのだろう。玲音君は分かったと言って荷物整理に戻った。


荷物整理を終えて戻ってきた玲音君は作戦会議しようと言って加奈子ちゃん含め全員を並木裏に集めた。


「第二公園に来れたのはいいけどこれからどうする?物資も集めなきゃ行けないし。取り敢えず安全そうだからここに来た訳だけど。草むらだから寝るのもしんどいだろうし。またどこかに移動しないと行けない」


「どこかねぇのかな。」


「今は周辺を探してみる?せっかくここまで来たんだし、今は大人もいないし。」


「でも、もしいたら?」


「……その場合は考えよう。」


「いついくの?」


「何も問題がなければ今からにでも行こう。早い方が身のためだ。」


「分かった。」


僕達は新たな仲間と荷物を持って周辺を探索することにした。


朝なのに誰もいない道をただ歩き続ける。


黒百合町では年々空き家が増えているらしい。


だからもしかしたらその中に入ることが出来れば安全な拠点を確保することが出来る。


僕たちは少しづつ歩き続けた。


そろそろ疲れてきた僕らは一休みできそうな場所を探しながら住宅街を歩いた。


しばらく歩いていた時、加奈子ちゃんが立ち止まった。彼女は一点を見つめていた。


「加奈子ちゃん?どうしたの?何か見つけた?」


立ち止まって聞く耳も立てていないであろう彼女のそばへ駆け寄る。


「何見てるの、加奈子ちゃ……」


彼女が見つめている先には大人がいた。


大人はこちらに気づいてこちらに向かってきていた。

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