第18話 再出発

 シルヴェーヌとロゼッタという名前と立場を捨て、セアとレイになった私達は各地を巡る旅を続けていた。


 海を見に行き、話に聞いたことのある有名な場所を観光し、商人たちが集まる街で買い物をした。自分達で自由に行き先を決めて、好きなことをするだけ。自由奔放な世界旅行。


 十分に旅を満喫した私達は、一旦腰を据えて冒険者活動を再開することに決めた。依頼を受けて、お金を稼ぐことにした。まだまだ所持金には十分余裕があったので、働かなくても生きていける。だけど、念のため貯めておくに越したことはない。


 冒険者の仕事を紹介してもらおうと、その国にある冒険者ギルドに初めて訪れたのだが。


「申し訳ありません。他国でのランクや実績は、評価の方法や基準が違っているので認められないです。登録し直してから、もう一度最初から。依頼をこなして、実績を積み重ねて下さい」

「そうなの。わかったわ」


  申し訳なさそうに説明する受付嬢の話を聞いて、想定外の事態に少しだけ驚いた。国によって、冒険者ギルドのルールが違うらしい。その事を私は知らなかった。ギルドに行けば、すぐに依頼を紹介してもらえると思ったのに。


 どうやら、別の国で認定されたランクや実績は意味がないようだ。なので、ここのギルドに再登録して、最初からやり直す必要があるらしい。


 面倒だと思ったけれど、仕方ないわね。ちゃんとギルドのルールに従うしかない。不満や文句を言ってもしょうがない。そうしないと、依頼を受けられないから。


 それに、ランクを取り戻して実績を作るのに、それほど時間はかからないと思う。一度、やってきた経験があるから。前よりも成長している今なら、もっと早く実力を認めさせることが出来るだろう。


 だから、あまり問題ではないと思った。焦る必要はないだろう。私達は、再登録を済ませた。


「今すぐに紹介することが出来る依頼は、こちらです」


 受付嬢が提示してきた依頼内容は、非常に簡単なものばかり。簡単だから、報酬もかなり低かった。でも最初は、こういう仕事をコツコツこなしていかないといけないのよね。昔を思い出す。


「セアお姉さま、この依頼とかどうですか?」

「そうね。それにしましょう」


 レイが選んだ依頼を受けることにして、早速仕事に向かおうとした。その時。


「おい、新人の嬢ちゃん達よぉ。俺達に挨拶もしないで、行くつもりかぁ?」

「舐めてんのか?」

「ただじゃ済まさねぇぞぉ」


 ギルドの建物から出ていこうとした私達の目の前に、屈強な男達が立ちふさがる。どこの国にも、こういう面倒な奴らは居るものなのね。

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