第19話 実力者

 若い女冒険者で、しかも2人だけのパーティー。それだけで、舐められてしまう。こんな事になるなら、顔を隠す変装を続けておくべきだったかしら。今は、身分など隠す必要がなくなったので素顔で活動している。だけど、隠し続けておくべきだったのかもしれない。年齢とかも隠しておけるように。


 ムカつくけれど、相手にするのも時間の無駄。さっさと、行ってしまおう。


「そう。それは、失礼したわね。こんにちは。それじゃあ、さようなら」

「あぁん!? なんだそれは!」

「俺達を舐めてんのか!?」

「バカにしやがって」


 彼らのお望み通りに、ちゃんと挨拶してから横を通り過ぎようとした。それなのに男達は、怒声を上げながら詰め寄ってきた。


 大声で脅して、怖がらせようというつもりのようね。だけど、私には通用しない。私だけでなく、後ろのレイも怖がっていないだろう。ただ、面倒に思っているだけ。


「別に、貴方達をバカにしてなんかいないわよ? 貴方達に付き合っている暇はないだけ。だから、もういいでしょう?」

「いいわけあるか! てめぇ! ふざけた態度とりやがって!」

「ちょっと可愛いからって、調子に乗りすぎだぞ! 痛い目に遭いたいのか!?」

「……貴方達が相手をしたいというのなら、挑戦に応じるけど? ただし、手加減はできないし、怪我しても知らないわよ?」


 私は腰に差している剣を抜き、彼らに突きつけた。


「はっ! 愚かな奴め!」

「実力の差も分からないとは!」

「怪我するのは、どっちかな!?」

「おい、お前ら! やっちまえ!」

「「「おう!」」」


 相手も臨戦態勢に。彼らは他にも仲間を呼んで、大勢で私達を襲おうとしている。少し挑発したら乗り気になって、やる気みたいだし仕方ない。


「あ、危ないッ!?」


 受付嬢の声が後ろから聞こえた。彼らの仲間が気配を消して、背後から攻めようとしている。先程から殺気を感じて把握していたので、その程度の奇襲なら問題ない。


「ぐあっ!?」

「な、なに!?」


 返り討ちにあい、地面に倒れて動かなくなった男が一人。私が一撃で倒した。


 殺していないが、気絶している。それを見て、驚く男達。この程度で驚くなんて、本当に舐められたものね。


「ゆ、油断するな」

「一斉にやれッ!」

「こいつら、逃がすなよ!」


 そんな事を言いながら、まだまだ油断をしている男達。全く脅威を感じない。この程度の実力で威張っていたのかしら。それとも、何か切り札があるのかしら。


「怪我しないように、気をつけてねレイ」

「はい! セアお姉さまも、気をつけて下さい」


 続々と襲いかかってくる男達を、レイと一緒に次々と倒していく。傍若無人に振る舞っていたわりには、意外と弱い。


 あれだけ自信満々に絡んできたんだから、もう少し歯ごたえがあると思ったのに。気付くと、襲いかかってきた男達、全員が床に倒れていた。ちゃんと生かしたまま、気絶させている。


「「「わぁぁぁ!!!」」」

「えっ!? な、なに!?」

「セアお姉さま!?」


 2人とも怪我もしないで、完全勝利した瞬間にギルド内が沸いた。何が起きたのか分からなくて、ビックリする私とレイ。


「君たち、なんて強さだ! あの乱暴者達を倒してしまうなんて!」

「すごかった! やっつけてくれて、ありがとう!」

「とても清々しい気分だよ」

「ありがとう! 本当に、ありがとうっ!!」


 周囲から歓声が上がり、口々に感謝の言葉を述べられた。


 どうしよう……、もの凄く恥ずかしいんだけど。




 話を聞くと、どうやら私達に絡んできた男達は評判の悪い冒険者だったらしい。色々と迷惑行為をして、時には暴力を振るうこともあったとか。


 ギルドから追い出したくても追い出せない。男達には実力があった。他の冒険者が何も言えないくらい、彼らは強かったらしい。


 あの程度で? 私は、レイと顔を見合わせた。実際に戦ってみたけど、それほどの実力者とは思えなかった。


 その後、私達がギルドで活動していると乱暴者の男達は大人しくなった。迷惑行為をやめて、周りに暴力も振るわなくなった。


 私達のおかげで、ギルドが平和になったと多くの人たちから感謝された。そして、実力も認められて任務もこなして、一気に冒険者のランクが上がっていった。

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