第16話 あの日から ※セドリック視点
シルヴェーヌに婚約を破棄すると告げた時、俺の人生は大きく狂い始めた。まさかこんなことになるなんて、予想していなかった。
あの日、目を覚ますとロゼッタが居なくなっていた。シルヴェーヌと一緒に逃げてしまったらしい。なぜ、あの二人が一緒になって逃げたのか。意味がわからない。
俺は混乱した頭で、なんとか二人の行方を探し出すように指示した。二人の家にも連絡を取ったが、どちらも行方不明のまま帰ってきていないという。
それから数日が経ち、ベルジュロン家からシルヴェーヌの貴族籍を除名するという連絡が入った。つまりシルヴェーヌはベルジュロン家から追放された。それに伴い、正式に俺とシルヴェーヌの婚約が破棄された。
もともと婚約していなかった、ということになったそうだ。詳しい話については、何も知らない。俺が知らない間に勝手に、両親達がさっさと話を終わらせてしまったから。とにかく俺は、婚約している相手が居なくなった。
もともと、そうするつもりだった。シルヴェーヌと結婚しても、険悪な関係のまま続いていた。いつか関係が崩壊して、大問題になっていただろう。だから、結婚する前に処理しておこうと思っていた。結局は両親だけで話し合って、勝手に終わらせてしまったけれど。
勝手に婚約させて、勝手に終わらせて。シルヴェーヌも、勝手に居なくなって。
俺だけ蔑ろにされているような気がして、モヤモヤしたイヤな気持ちだけ残った。それは、まだいい。
問題は、俺が愛していたロゼッタも居なくなってしまったこと。
彼女と一緒に過ごせたなら、素晴らしい人生を送ることが出来るだろうと確信していたのに。拒否されてしまった。そんなこと、予想外だ。
しかも、ミレニア家はロゼッタを養子にしたことを取り消した。事件があった後にすぐ離縁して、関係を絶ってしまった。厄介事に巻き込まれないように、素早く手を打っていた。ロゼッタの存在も消し去って。
俺が愛したロゼッタは、居なくなってしまい、これから俺は、どうすればいいのか全く分からなくなった。行方不明のまま、発見したという報告がない日々が続いた。もう二度と、会うことが出来ないのかもしれない。
絶望した気持ちにのまま、時間は過ぎていく。
そんな俺に、更に悪い知らせが届いた。王位継承順位を降格させられることになった。あの問題を起こして、婚約する相手も居なくなってしまった。社交界では色々と俺に関する悪い噂も流れているそうで、王子としての権威が失われてしまった。
俺だけが悪いんじゃない。シルヴェーヌだって、問題の大きな原因だったはずだ。ロゼッタがプロポーズを受け入れたら、何の問題もなかったはずだ。今でも俺に婚約相手が居て、王位継承順位を降格させられることも無かったはず。
なんで、こんな事になってしまったのだろう。どうして俺だけが、こんな目に遭うんだ? 俺は何もしていないし、悪くもない。なのに何故……。
焦燥と後悔の日々が続いていく。
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