第15話 決断

 お互いの事情は、よく分かった。次は、これからどうするのか。


「王国には居られなくなった。だから、他の国に行くしか無いと思う」

「そうですね……」


 私の言葉に、レイが頷いて同意した。私はそんな彼女の横顔を眺めながら、今後のことを考えていた。


(どこの国へ行こうかしら。……冒険者の仕事がある所とか。それとも、しばらくはゆっくり過ごせる所が良いかしら)


 王国から出ていくことは確定事項だった。だけど、行き先は決めていない。どこに行くのか、目的地を考える必要がある。その前に、確認しておく事があった。


「レイは、この先どうするつもりなの?」

「もちろん私は、セアお姉さまと一緒に行きたいと思っています!」


 即答された。


「そ、そうなのね……」

「当然ですよ。ここで、お別れなんて嫌です」


 予想していた通りの答えだったけれど、いざ面と向かって迷いなく真っ直ぐに言われると、ちょっと照れるわね……。


 だけど、彼女が一緒に来てくれるというのなら心強い。責任も取らないと。王子を気絶させてしまったのは、私を守ってくれようとしたから。ここまで一緒に逃げて、私が連れてきてしまったから、もう後戻りもできないだろうし。


 今から戻って事情を説明しても、罰を与えられるだろう。少なくとも、何らかの罪は負う事になるはず。無事では済まない。


 幸い、彼女も色々と問題を抱えていた。家族との関係は良くないようで、家に帰る気は無いようだ。私と一緒。


「それなら早く準備を整えて、出発しちゃいましょう」

「はい! セアお姉さま!」


 私達は、早速行動を開始した。旅の荷物を纏めて、二度と戻ってくる必要の無いように拠点の中にあった家具や雑貨、仕事の道具など全て処分した。


 部屋の中には何一つ残さないで、綺麗にしておく。


 翌日になって私達は馬を調達すると、王都から出発した。まだ日が高いうちに街を出て、人目を避けながら森や山を進んでいく。それか数日かけて、なるべく遠くまで移動を続けた。


 途中、何度かモンスターと遭遇した。けれど、レイと協力して撃退する。冒険者の仕事で何度も戦ってきた相手。特に問題無く倒すことが出来た。依頼は受けていないので、報酬は受け取れないが。


 レイとは連携が取れているし、二人で協力して戦う事にも慣れていた。


 夜になると野宿をして、交代で見張りをしながら朝を待つ。そしてまた、休むことなく前へ進み続ける。そんな生活を繰り返した。


「さて、これからどこへ行きましょうか?」

「私、海を見てみたいです」

「それなら、あの国かしら?」


 何事もなく無事に国境を超える。特に何の感慨もなかったので素通りした。


 今まで暮らしてきた王国の外にある世界へ足を踏み出したというのに、感動や実感など無いまま。とても、あっさりしたものだった。

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