第5話 彼女の才能
ギルドマスターに押し付けられて、嫌々ながら面倒を見ることになってしまった、新人の女冒険者。だけど一緒に活動してみると、意外と彼女に戦いの才能があることが判明した。
普通の新人冒険者とは違って、戦いに関する才能があった。ちょっと見ただけでも分かるぐらい磨けば光るものがある。
ギルドマスターは、彼女の才能を見抜いていたのかしら。だからこそ、この才能を開花させるため、私に任せようとしたのかも。彼女の才能を知って、そう思った。
「あの、セアさん。何か考え事ですか?」
彼女が話しかけてきた。今は、討伐対象のモンスターを退治している最中だった。戦いの最中に、こちらに注意を向ける余裕もある。
「いえ、何でもありませんよ。それより、ちゃんと周りを警戒しなさい」
「はい!」
元気よく返事した彼女は、戦いに集中する。私の言うことを素直に従ってくれた。おかげで助かった場面もある。ただ、無茶をすることもあった。そこは注意すれば、すぐに直してくれるので鍛えがいのある子だと思った。
(本当に、この子は何者なんだろう?)
最初は、ただの新人冒険者だと思っていた。だが、明らかに違う。所作や言葉遣いなど、貴族的だった。一般市民でないことは、私には分かる。
彼女が一体、どんな環境で育ってきたのか。少しだけ興味を持った。だけど、私も事情を隠して冒険者をしている。もしかしたら彼女も私と同じように、色々な事情を抱えているんじゃないだろうか。
そう思うと、何者なのか聞き出すことは出来なかった。
仕事が終わって、ギルドに報告しに行く。無事に依頼は完了。報酬を分け合って、少しだけ戦いのアドバイスをした後、彼女とは別れた。
予定していた時間までに仕事が終わったので、彼女は邪魔ではなかった。だけど、余計な神経を遣った気がして疲れた。
これから、彼女との関係が続いていくのか。あまり、関わり合いになりたくない。けど、少しだけ興味を持ってしまった。このまま、無関心を貫くのも難しそう。
でも今後は、新人の面倒を見てくれと頼まれても断ろう。そう心に決めた。
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