第4話 新人で若い女冒険者

 ある日、いつものように顔を隠す変装して冒険者の姿で依頼を探すためにギルドに来てみると、カウンターのところに見知らぬ女性が立っていた。


 とても若い女性だった。受付嬢と話し込んでいる。見た目が私と同じぐらいの若さで、珍しいなと思った。自分以外で、あんなに若い女性が冒険者活動をしているのは初めて見る。よその街から遠征に来た冒険者なのかしら。一人のようだけど。


 そこで観察を止めて、私は開いている受付嬢に依頼の話をする。


「今日は何か、良い仕事はあるかしら?」

「セアさん。はい、セアさんご指名の依頼がありますよ」

「依頼の内容を教えて」


 適当に良さそうな依頼を選んで、手続きを済ませる。今日の仕事は、これぐらいでいいだろう。モンスターの討伐と、特殊な場所にある鉱石の回収。依頼内容の確認を終えて、これから向かおうとした時。


「あの」


 声をかけられた。振り向くと、先ほどの同い年ぐらいの女性冒険者が居た。近くで見ると、やっぱり若い。


「私も一緒に仕事をしてもいいですか? 実は、今日初めて冒険者になったばかりで……」

「は?」


 何を言っているんだろうか、この子は。私は、怪しむような目で彼女の顔を見た。彼女は、そんな私の視線に気づいていないのか話を続ける。


「私の名前は、レイと言います。よろしくお願いします!」


 そう言って頭を下げる。そして、顔を上げた時に目が合った。彼女の瞳には、強い意志のようなものを感じた。なんというか……、何を言っても諦めないというような感じだ。面倒な。


「すまないが、俺からも頼む。彼女の面倒を見てやってくれ」

「なんで、私が……」


 ギルドマスターがやって来て、私にお願いしてくる。この新人を、私に押し付ける気らしい。


「報酬も払うから、頼む。お前にしか頼めないんだよ!」


 ギルドマスターは、必死の形相で頼み込んでくる。何故そんなに彼女を気にするのだろうか。女としての魅力を感じているのだろうか。だとしたら許せないわ。いや、別に嫉妬とかではないけどね。面倒な男女関係に巻き込まないでほしいだけ。


 ただでさえ、自分の婚約関係のことで精一杯だというのに。他人の事情で悩まされたくない。


「嫌ですよ」

「そこをなんとか頼むよ……。彼女、キレイだろう? この子を、乱暴な冒険者には近づけたくないんだ。それに、君なら実力もあるし安心できる。どうかな?」


 私はハッキリ断る。だけど、ギルドマスターがしつこく縋り付いてくる。


 確かに、この子は美人だ。そのせいで、男性の冒険者からは変な誘いを受けるかもしれない。それは可哀想だし、この子が冒険者としてやっていけるのかどうか不安になる。


 でも、それとこれとは話が別だ。そもそも、なんで私が引き受けなければならないのよ。冒険者は自己責任なんだから、自分でなんとかしなさい。


 私は、誰とも関わり合いになりたくないのに。


「お願いします!」

「ダメだって」

「お願いしますッ!」

「いや、だから……」

「お願いします!!」

「……」


 何度も繰り返し、頭を下げてお願いしてくる彼女。しつこくて、離してくれそうにない。


「……はぁ」


 私は、ため息をついた。もう、どうしようもない。仕方がないから引き受けよう。もし、この子がダメだったら、バッサリ言って冒険者を諦めさせたらいい。その方が早く終る。それでいいだろう。


「わかりましたよ。ただ、私の邪魔をしないでくださいね」

「ありがとうございます!」


 こうして私は、初めて仲間とパーティを組むことになった。まさか、私が他の人と組むことになるなんて思ってなかった。ずっと一人で活動するつもりだったのに。

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