忘れてはいけない何かを、ゆっくりと思い出せるような心地でした。恋人との遠距離恋愛。そこで生じた数々の、些細でありつつも心に残り続ける気持ち。一話完結、そして少ない登場人物でありながらその内面の描写は広く、厚みを感じます。物語の綴り手の率直さ、そして作り手の願いが込められている。舞台である喫茶店Cafe〝憩〟の持つ雰囲気と相まって、それはとても柔らかな読後感を読み手に与えてくれます。読者のかたそれぞれの誰かに、何かに。大切な気づきを与えてくれる作品です。