監禁少女

@pupupunopu0211

第1話


「こうして魔法少女は見事魔女を倒すことが出来ました」


彼女は一息つくと、「めでたしめでたし」と言葉をつむぎ静かに本を膝に置いた。


すごく眠い。


この部屋には時計がないため正しい時刻は分からないが、起きてから3度目の食事の後から体内時計で数刻たっているように感じるのでもう寝てもおかしくない時間なのだろう。


そう考えに至った途端さらに眠気が増したような気がした。


「やはり退屈ですか?」


「ううん、そんなことないよメイコ」


メイコは毎日違うお話を私に読んで聞かせてくれていた。

どれも、これも、聞いたことのないお話ばかりで退屈したことなどない。

だから気を使って否定したわけではなかったのだが、メイコは少し困ったような顔をした。


「お嬢様は外に出たいですか?」


「別に・・・、私は外に何があるか知らないもの」


私は外の世界を知らない。物心がついてから、この屋敷の外に出た記憶が1度もないのだ。それに字の読み書きも私は知らなかった。空の青さも、海の広さも、山の高さも、何もかもメイコの読み聞かせや絵本で見て知っているだけだった。

だからと言って外に出てまで知りたいと思うことは今まで無かった。



だってココが私の世界なのだから。



「ねぇ、メイコは魔法少女が好きなの?」


「何故ですか?」


「だって、メイコが読んでくれる物語にはいつも魔法少女がでてくるんだもん」


メイコの読む本にはいつも魔法少女が出てきていた。

詳細は違えど魔法少女が悪い魔女を倒して世界に平和が訪れる話だ。

メイコは「そうですね」と少し目線をそらした後、少し考えるような素振りを見せた。


「大好きです」


「ふふ」


私は自分でもよくわからないが少し嬉しくなった。

そして、ふと疑問に思ったことを気付いたら口に出していた。


「魔法少女は幸せになれたのかな」


いつも物語は魔法少女が魔女を倒して世界が平和になって終わってしまう。

世界が平和になったのだから、魔法少女は幸せになったのだろうか。


「私はそこ迄の物語しか存じ上げないので、わかりませんが・・・・」


メイコは少し言い淀みながらこう続けた


「幸せの定義は人それぞれですが、魔女を倒すために大きな力を使ったということであれば、それ相応の代償が必要になるので、その代償を誰が負ったのかによるのではないかと」


「代償?」


「いえ、なんでもありません」


メイコは困ったように笑い「あくまで物語の中の話です」と念をおすように言いながら、本をもち立ち上がった。その背表紙には見たことがあるような文字が刻んであったが、私には読むことが出来なかった。


「お嬢様は幸せですか?」


「ええ、とても幸せよ。あなたは?」


「お嬢様が幸せであることが、私の幸せですから」


そうやって彼女が愛しそうに微笑むから、今は気付かないでおこうと思う。

おやすみなさい、また明日。



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