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「よお、あんたらここで何してんだ?」


 男が言った。それはお互い様だ、エバは思ったが、言わないでおいた。ニットの帽子にパーカー、リュックを背負っていた。帽子の下の髪の毛は緑色をしていた。寝ているのか起きているのかわからないくらい目は細かった。まるでこの森にピクニックに来ているかのような雰囲気であった。


「ちょっと野暮用で。あんたは?」

「オレか?オレはそうだな、まあリフレッシュ休暇みたいなもんかな」


なにか事情がありそうだったが、詮索しないでおこうと思った。あまり時間もない。


「この狼はあんたのペットか何かか?」

「いや?今はじめて会ったけど?」

「なんだって?今みたいなの、どうやってやるんだ?」

「どうやってやるんだって聞かれてもな。気がついたらできるようになってた」


 今日はじめて見た野生の狼数頭を、口笛だけでおとなしくさせたのか。そんなのは普通ありえない。今日は驚きの連続だった。だが、エバには思うことがあった。自分も物心ついたときから、他人とは違うことができた。それと、この男からも、さっきの長身の男と同じく、他の人々からは感じない「何か」を感じていた。この仮説が正解なら、さっきの男も…エバは、思いきって聞いてみた。


「あんた、異能者ストレンジャーか?」

「すとれんじゃー?…あの異常な能力がどうとかいうあれか?」

「そうだ。」

「ああ、そういえばそんなこと言う奴もいたな。そうかもな」


 エバ同様、自分では自覚がないようだ。だが、さっきの離れ業は普通の人ではありえない。よく見ると、この狼たちは、この森で最も凶暴と言われている、カトウオオカミだ。そう簡単におとなしくさせることなど出来るわけがない。やはりそうだろう。調教師といったところだろうか。異能者ストレンジャー同士は、他人とは違う「何か」を感じ取れるのかもしれない。そうなるとさっきの男も…そう思ってから、エバは自分が異能者ストレンジャーだと認め始めていることに自嘲した。


「そんなことより、早く行こうよ!」


少年は落ち着いたのか、先を急かした。すると今度は、また近場から、


「こっちだ!こっちから聞こえたぞ!!」


という声がした。まったく次から次へと…エバは辟易した。

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