Run away , through the labyrinth
1
メチャケの森。フジテのはずれに存在するその森は、別名、
「ちょっと待ってくれ君!」
自分より運動能力が高いと分かっていたが、それにしてはずいぶんと早い。ついていくのがやっとだ。下手をすれば、あっという間に引き離される。
「早くしてよ、追いつかれちゃうよ!」
「まだ奴らの姿は見えない。ちょっと休憩させてくれ」
「ちょっとだよ」
エバは両手を両膝につき、息を整えた。
「ずいぶん早いな。森の中は得意か?」
「…僕はこの森のもっと深いところでじいちゃんと住んでたんだ」
「なんだって!こんな森でどうやって!」
「じいちゃんは農業をしてた。ときどき鹿とかも捕まえてた」
「そうか、それは大変だったな」
今の時代に自給自足生活とは。かなりの苦労があったはずだが、今は無駄な詮索はしないことにした。
「じいちゃんが奴らに殺されたって言ってたな。なぜだ?」
「わからないよ!ぜんぜんわからないんだ!!」
少年は少し激高した。
「すまない、落ち着いてくれ」
どうやら少年も、訳も分からず逃げているようだ。
「とにかく逃げようよ、早く!」
「わかった」
また進もうとした、そのときだった。小高い丘の上から、獣のうなり声が聞こえてきた。見ると、10頭前後の狼の群れだった。
「グルルルルルル…」
「こういう時に、そうきたか・・・」
エバは広告のキャッチコピーのようなセリフを吐いた。それどころではないだろうに。こういう時のために、マサヒはオレに行かせたのだろう。自分の「麻酔」は獣にも通用するはず、少しくらいは怪我するかもしれないが、なんとかなるだろう、エバはそう考えた。彼の
「ううう…まただ、なんでいつもこうなんだ…うううう…」
尋常ではないほど狼狽している。なにかトラウマでもあるのだろうか。
「心配するな!落ち着け君!オレがなんとかするから!」
そうこうしているうちに、狼の群れは駆け出した。こちらに向かってくる。エバは身構えた。最初の一頭が、エバに接触する、まさにその瞬間だった。
「ピィーーーーーーー」
わりと近場から、口笛のような音がした。狼たちはその口笛のような音に反応したのか、静かになり、音のした方向を見ている。エバもその音がした方向を見た。また、見知らぬ男が立っていた。
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