第5話 ムーンライト
翌日の清々しい朝。
秋子には目に写る光景が、全て美しく見えていた。
再び世界が美しく輝き出したのだ。
職場でもご機嫌な秋子のその様子に同僚が気づいて、「どうしたの?なんか良い事でもあった~?」
「ちょっちゅね~」秋子が返事する。
「なによそれ(笑)」と同僚
鼻歌を歌いながら仕事を始める。
昼休み。ひとり公園で鵠沼海岸の写真をニヤニヤと見て、あの海に思いを馳せる。
やっぱり日曜日にまた行こう。
あの感じでは美鈴は誘っても一緒に来てはくれないかしら…
けど、今回はちゃんと鵠沼海岸に行くと伝えよう。
またあの日と同じパーカーを着て行こうかしら。彼が居たら気がついてくれるかもしれないし。
秋子はご機嫌で仕事へと戻って行った。
休憩室に入ると、なにやら懐かしい音楽が流れていた。
これセーラームーンじゃない(笑)
同世代の同僚達は懐かしいアニソン動画をスマホで皆で見ていた。
あなたを見つけられる
神様叶えてハッピーエンド
「なんやこれ!神曲やないかい…」
と心の中で叫んだ。
最近なぜか関西弁が出る。
そういえば、この前は十三夜だったな~
お月見のお菓子を仕事で作ったのに
月を見てなかった。
今日は晴れてるし夜に月見をしよう。
帰宅して娘と夕食を済ませた後に秋子は
「美鈴 一緒に井の頭公園に月見散歩しに行かない~」
と言ってみた。
「えぇ~今日はアニメ観たいんだけどー
観たいのいっぱいたまってるんだよ」
と美鈴が言う。
あら、そう。
秋子はふてくされ
「じゃあいい。ひとりで行って来るわっ!」
秋子は冷蔵庫からビールを2本抜き出すと
エコバッグに装填して家を出た。
爽やかな秋の風が吹く井の頭公園は意外と人が多かった。
空いてるベンチを見つけると、秋子はおもむろにビールを取り出し、飲み始めた。
うまい。外で飲むと美味しさ100倍。
公園ビールもいいもんだ。
少し騒々しい公園で月を見上げる。
「あたしもまた輝くだろう、今宵の月のように」
…
武蔵野の月を井の頭公園で眺めているのに
秋子の心は鵠沼のあの浜辺にいた。
しんみりと月を眺めていると、甲高い笑い声がしゃくにさわった。
近くのベンチでイチャイチャする若いカップルだった。
反対を見ると、そちらにもいつの間にかカップルが…
フンフン。
今は寛大でいられない自分がいた。
夜空には煌々と光る月
なんかイラついてきた。
そして彼への想いが強くなっている事に気づいた。
「帰るわ。
誰か撃ち落としてください
あの嫌みったらしく光る月を。」
コンビニエンスストアで350MLの缶ビール買って、ひとり散歩しながら帰ってやる!
コンビニに入ったらビールより先にザッハトルテが目にとまり美鈴の分も買って帰る事にした。
帰宅するとザッハトルテをむさぼり食って、一息すると機嫌が直った。
「お母さんどしたの?」と美鈴
「別に~ザッハトルテの夜よ」と秋子
「なにそれww変なの~
先シャワー浴びちゃうね~」
美鈴は母が以前より明るくなったのを見て喜んでいた。
「もしかしたらなんかあったのかな~
母親の前に女なのよ~的なw」
女の勘は鋭い。鍛え上げ、研ぎ澄まされた、日本刀の刃のように鋭いのだ。
ちなみに美鈴は刀剣女子なのだ。
幕末の刀匠、源 清麿が1番の推しだ。
美鈴の性格を表す様に豪快な名刀だ。
秋子は鵠沼海岸の事を美鈴に話せずにいた。
とりあえず、日曜はまたひとりで行こう。
彼のTwitterを覗いて見る。
平日は何も投稿していないようだ。
「ん~とりあえず日曜日が楽しみだわ。」
そう、偶然もチャンスに換えてみたい…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます