第14話 その結果

 王国軍と反乱軍の争いは続いていた。


 王族と貴族が争っている間にライルという男をリーダーに据えた街は、どんどん発展していった。いつしか、王都に負けないほど大きな都市になっていた。


 住民が増えて、商人が集まり、外敵からの防御もしっかりしている。安全で快適に暮らせる都市だった。その話を聞きつけて、もっと人が集まってくる。そんな人達を次々と、受け入れていった。


 大都市に発展した街に蓄えてある食料や武器などを奪い取ろうと、王国軍と反乱軍が交互に攻めて来たこともあった。だが、強固な街の壁と武装した市民軍に、どちらも歯が立たずに撤退。戦いに敗れ、無意味に消耗して逃げていった。市民は強かったけれど、無駄な争いは避けた。王国軍と反乱軍の争いには、絶対に介入しなかった。


 不毛な戦いを繰り返す王国軍と反乱軍は、必要な物資を失っていった。兵士の数も減っていく。食べ物もない。生きるだけでも一苦労な、悲惨な状況に突入する。


 戦えるような状況じゃない。それなのに彼らは、争いを止めようとはしなかった。ついに両者共倒れとなり、王国が崩壊する。


 争う者達が居なくなって、ようやく戦いは終結した。


 王族や貴族が居なくなり、新たに国を統治する者が必要になった。争いに参加せず生き残った貴族の残党が、新たな君主に名乗りを上げる。だが、猛反対する民衆達によって追い払われてしまった。


 話し合いの結果、市民の中から選ばれたリーダーのライルが新国家の統治者となることが決定する。


「ライル様を新たな君主に!」

「「「賛成!」」」

「ライル様こそ、この国の支配者に相応しいッ!」


 平和になって、新たな君主の誕生を祝う市民達。




「え? それで王国は、無くなっちゃったの?」

「はい。現在は、ライルが統治する国に変わりました」


 ユリアから、地上の現在の状況について教えられたユリアンカ。


 知らない間に、王国が崩壊していた。しかも、彼女の作った自動人形が新たな国家の統治者になったらしい。ユリアンカは、その事実に驚いた。


「そうなんだ……。でもまあ、争いが終わったのなら良かったね」

「はい! これで、ようやく平和になりました。多くの人達が安心して暮らせます」


 ユリアンカは自動人形達に、自由にしていいと指示を出した。その通りに実行した彼らの行動を認めるしかない。文句もなかった。


 これから先も、彼らの好きなように行動させる。それを邪魔することはないように気をつけようと、ユリアンカは思った。


 地上の面倒事には関わらないで、空の上で自由に研究と開発を続けるだけ。そんなユリアンカのスタンスは、死ぬまでずっと変わることは無かった。

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