第5話 彼女が生み出された理由
ユリアンカは、生まれた時から天才だった。様々な物事や現象を理解して、新しいアイデアが次々と脳内に湧き出てきた。そのアイデアを現実の物にするため、様々な研究を行った。データを集めて、設計して、数多くの発明品を生み出してきた。
3歳の時、屋敷の地下に秘密の研究基地を作った。両親の許可も得ないで勝手に。今も、その存在を家族の誰にも知られていない。ユリアンカだけの場所だった。
5歳の時、もっと研究と開発に没頭したくなった。日常の面倒なことは、もう一人の自分に任せよう。そんな考えで生み出されたのが、ユリアだった。
それからユリアンカは、身の回りの世話を任せる者や研究室を掃除してくれる者、開発に必要な素材を集めてくる者、様々な未知の情報を収集してくる者、他にも色々な目的で自動人形を数百体ほど作成した。
彼ら彼女らは、色々な場所へ派遣されて任務を遂行している。
残念ながら、自分と同じように天才的なアイデアを思いつくような自動人形は作り出せなかった。だから、研究や開発は自分で行う必要がある。時間が足りなかった。
「すぐに、あの子たちも呼び戻しましょう」
「はい! それが良いと思います」
ユリアの報告を聞いたユリアンカは、王国から旅立つ準備を始めた。
各地にいる自動人形たち全員と連絡を取って呼び戻す。ユリアも、自分と同じ自動人形を連れて行ってくれることが嬉しかった。この先も、ユリアンカと一緒だ。
翌朝に旅立つ予定で、朝までには全員を帰還させる。フルパワーで急いで戻れば、余裕で間に合うだろう。そして、全ての自動人形たちを連れて天空にある秘密の研究施設へ移動するつもりだった。
そこで情報を整理してから、今後の動き方を決める。とりあえず、ノイマイン王国と距離を置くことは決定事項。
両親や兄弟とも、関わりを断つことにしよう。今まで発明品の一部をマルクラム家に提供して、富を築いてきた。
ユリアンカが生まれてから、マルクラム家は裕福になった。それで、生んでくれた恩は十分に返せただろうとユリアンカは判断した。だから、家を出ていく。家族との関わりに未練もないから、ついでにお別れしてしまいましょう。
本当は、離れるつもりはなかった。何事もなければ、ここを旅立つつもりなどなく研究と開発に没頭して続けていただろう。けれども、婚約破棄という面倒な出来事が起こってしまった。厄介なことからは、とりあえず逃げるのが一番だ。
必要な物だけ持って、早くここから旅立とう。そうすれば、また研究と開発に没頭できる。今度は誰にも邪魔されず、自分の好きなように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます